マーベル宇宙とは? どこから手をつければいいのか解説、最終章公開で
レイチェル・フォーリー、エンターテインメント担当記者
<ネタバレ注意!! この記事は過去のマーベル映画の内容に触れています。比較的最近の映画の内容も含まれます>

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「アベンジャーズ/エンドゲーム」のポスター。登場人物はみんな真剣な表情だ……。
マーベル・スタジオの最新映画、「アベンジャーズ/エンドゲーム」がイギリスでは今月25日、アメリカや日本では26日に公開される。2019年最大の注目作のひとつで、最大のヒット作になるのではないかとみられている(文中敬称略)。
いわゆる「マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)」と呼ばれるひとつの宇宙で起きる様々な物語を描いてきた長大なシリーズの22作目となる。1作目は2008年公開の「アイアンマン」だった。
話題の「エンドゲーム」を見てみたい、でもMCUについてあまりよく分かっていないし、そもそもあまりに世界が大きすぎると気後れしているそこのあなた、大丈夫!
「エンドゲーム」を楽しむために必要な全てを、解説する。

マーベル・シネマティック・ユニバースとは
「マーベル・シネマティック・ユニバース」、略して「MCU」とは、マーベル・コミックスの様々なキャラクターたちが登場する映画22作品が共有する宇宙のことだ。
1本1本の映画にはそれぞれ個別の起承転結があるが、それと同時に他のMCU映画とつながり、ひとつの壮大な物語を描いている。これはマーベル・コミックスの発行責任者だった故スタン・リー氏が、コミックスを描く際に使った手法だ。
MCUシリーズのこれまでの総興行収入は計182億ドル(約2兆380億円)で、映画史上最も成功した映画シリーズだ。

どの映画をどういう順番で見るといいのか
映画の公開順ではなく、話の内容の時系列順に見るのをお勧めする。
とても便利なことに、マーベル・スタジオの公式解説本「Marvel Studios: The First 10 Years」には、公式のMCU年表が載っている。
昨年11月にこの本が出版された後に公開された映画も取り込んで、時系列の一覧を作ってみた。


作中の年代順に並べると、MCU22作品の順番はこうなる――。
- 1943:キャプテン・アメリカ
- 1995:キャプテン・マーベル
- 2010:アイアンマン
- 2011:アイアンマン2
- 2011:インクレディブル・ハルク
- 2011:マイティ・ソー
- 2012:アベンジャーズ
- 2012:アイアンマン3
- 2013:マイティ・ソー・ダーク・ワールド
- 2014:キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー
- 2014:ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー
- 2014:ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス
- 2015:アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン
- 2015:アントマン
- 2016:シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ
- 2016:ドクター・ストレンジ
- 2017:スパイダーマン:ホームカミング
- 2017:ブラックパンサー
- 2017:マイティ・ソー バトルロイヤル
- 2017:アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー
- 2017:アントマン&ワスプ
- 2017:アベンジャーズ/エンドゲーム
ただし、ひとつオタク的な注釈をつけるなら、「アントマン&ワスプ」の主な出来事は厳密に言えば、「インフィニティ・ウォー」の前に起きるが、本編後のクレジットロールの後の場面は、「インフィニティ・ウォー」の事後のことなので、この順番で見るのをお勧めする。

マーベルはなぜこのキャラクターたちで宇宙を?
マーベル・スタジオは2007年、経営破たんした会社再建のため、X-MENやスパイダーマンなど、自社のラインアップでも特に人気の高いキャラクターの映画化権を売却したところだった。
一方で、アベンジャーズ・チームの中核にいるスーパーヒーローたちの権利は自社に残したため、アイアンマンやハルク、ソー、キャプテン・アメリカなどを使って初期のMCU映画を作り始めた。
さらにマーベルは、それぞれが主役級のこうしたキャラクターたちを集めて、2012年の「アベンジャーズ」を作った。アベンジャーズのメンバー一覧はこちらにある(英語)。
このヒーロー全員集合映画は、最初から計画されていたものだ。
最初に公開されたMCU映画「アイアンマン」で、早くもアベンジャーズについての言及がある。エンドロール後の場面で、サミュエル・L・ジャクソン演じるウルトラスパイのニック・フューリーが、アベンジャーズについて触れるのだ。

全部の映画を見るのは時間的に無理! 飛ばすとしたらどれ?

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最強の敵、サノスのようにMCUをバラバラにしてみる?
「エンドゲーム」は計22作品の最終章だ。けれども、大丈夫。全部を見なくても「エンドゲーム」を楽しむことはできる。
以下の10本は省いても、まだ「エンドゲーム」の概要は理解できるはずだ。
- インクレディブル・ハルク――ここに登場する主要キャラクターについては「アベンジャーズ」で全部分かる
- マイティ・ソー――同上
- マイティ・ソー・ダーク・ワールド――これを見なくても「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」の内容はだいたい分かる
- アイアンマン2――ただし、これがスカーレット・ヨハンソンのMCU登場作品なので、ファンは見逃さない方がいい
- アイアンマン3――主役のロバート・ダウにー・ジュニアはいつでも見ごたえがあるが、これを見なくても全体の流れが分からなくなったりはしない
- アントマン――スコット・ラングとその超能力については、「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」であらためてきちんと説明がある
- ドクター・ストレンジ――この映画でMCU全体のあらすじにとって大事なのは、「インフィニティ・ストーン」だけだ
- ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス――登場人物の描写が深掘りされるのが面白いが、最終決戦についての新情報はない
- ブラックパンサー――MCU映画の最高傑作のひとつで、スーパーヒーロー映画としてアカデミー賞受賞作となったこの映画を飛ばしてもいいとは言いたくないが、「ワカンダ王国」が登場したという以外、人物紹介としては「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」と「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」でカバーできる
- キャプテン・マーベル――この映画も、見る機会があるなら見た方がいいが、その時間がないなら、ブリー・ラーソン演じるキャロル・ダンバースは超能力を「スペース・ストーン」こと「テッセラクト」で獲得し、「エンドゲーム」の最終決戦で大事な役割を演じるという2点だけ、分かっていればなんとかなる。さらに、アベンジャーズを結成させたニック・フューリーが片目を失ったのは、猫の姿をしたエイリアンのせいだったというのが、この映画で分かる。

「アベンジャーズ/エンドゲーム」はなぜそれほど大事なのか
「アベンジャーズ/エンドゲーム」の予告編
マーベル・スタジオは一連のMCU映画を、まとまった時期に分けて計画してきた。数本ごとに、主要キャラクターが集合する「アベンジャーズ」映画でその時期を区切りにするという方式だ。
「アベンジャーズ」が第1期(フェーズ1)の区切り、「エイジ・オブ・ウルトロン」が第2期(フェーズ2)の区切りだった。
「エンドゲーム」は第3期の終わりというだけでなく、全22作の総決算だ。マーベル・スタジオのケヴィン・ファイギ社長は、この全体を今では「インフィニティ・サーガ」と呼んでいる。
MCU映画合計3フェーズの通しタイトルとなった「インフィニティ・サーガ」は、全体を貫く物語への言及となっている。つまり、所有者に絶大な権力を与える6つの「インフィニティ・ストーン」を誰がどう集めるか、その過程でジョシュ・ブローリン演じるタイタン星人、最強の「サノス」を相手にアベンジャーズがどう戦うかが、22作を通じた大きな物語なのだ。
「インフィニティ・ウォー」では、6つのインフィニティ・ストーンを一手に集めたサノスが、指をパチンと鳴らすだけで宇宙の生命を半減させた。犠牲者名簿はこちら(英語)。
「エンドゲーム」では残るアベンジャーズが、このサノスと戦い、世界を救おうとする。
マーベル映画に長年出演してきた大物俳優の一部は、今回の映画で契約が切れる。それだけに、「エンドゲーム」でラストまでどのキャラクターが生き延びるのかは、あらゆる展開があり得る。

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クリス・エヴァンズのキャプテン・アメリカは「エンドゲーム」がエンドになるのか
スティーヴ・ロジャースことキャプテン・アメリカ役のクリス・エヴァンズ、マイティ・ソー役のクリス・へムズワース、トニー・スタークことアイアンマン役のロバート・ダウニー・ジュニアはそれぞれ、契約満了を迎えたと広く報道されている。
また、スカーレット・ヨハンソン(ナターシャ・ロマノフことブラック・ウィドウ)、ジェレミー・レナー(クリント・バートンことホークアイ)、マーク・ラッファロ(ブルース・バナーことハルク)の契約も、満了ではないかと言われている。
ブラック・ウィドウ単独の映画も製作中だとされるが、前日譚(たん)の可能性もあり、ブラック・ウィドウが最終決戦を生き延びる保証はない。
確かなことはひとつ。「エンドゲーム」の物語が決着するには、時間がかかる。
上映時間3時間20分で、MCU映画としては過去最長だ。ちなみに、ピーター・ジャクソン監督の「ホビット」3部作の第1作「思いがけない冒険」と同じ長さだ。

MCUの将来は?

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ハルクは助かるのか? 主要キャラクターの1人が最期を迎えるといううわさがあるだけに……
「エンドゲーム」の後には、MCUの大々的な刷新が予想される。
フェーズ4の第1弾は、今年7月5日に公開予定の「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム」だ。プロデューサーのエイミー・パスカルによると、「アベンジャーズ4の物語が決着したその数分後」から始まるという。
「インフィニティ・ウォー」でサノスが指を鳴らして、多くのヒーローがかき消された。トム・ホランド演じるスパイディーもその1人だったが、次回作の主演なのだから、「エンドゲーム」のエンドクレジットが流れ始めるまでに、元気に復活するのだろう。

フェーズ4には、すでに死んだはずのキャラクターが登場する新作も予定されている。
マーベルのファイギ社長によると、ベネディクト・カンバーバッチが演じるドクター・ストレンジの続編も「将来いずれ」予定されている。
チャドウィック・ボーズマン演じるブラックパンサーも、一度は時空の中でバラバラになってしまったが、おそらく復活するはずだ。
「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」の第3弾も、ジェイムズ・ガン監督の復帰と共に確認されたが、どのキャラクターが再登場するかはまだ分からない。「インフィニティ・ウォー」の最後で、消されずに残ったガーディアンは、ブラッドリー・クーパー演じるロケットと、キャレン・ギランのネビュラだけだった。
ファイギ社長はさらに、フェーズ4では、ブリー・ラーソン演じるキャプテン・マーベルの単独続編もあり得ると示唆している。
このほか、「エターナルズ」というシリーズや、武道の達人「シャン・チー」を主役にした新作も製作が始まっている。

同じマーベルのキャラでもMCUの一部ではない?

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ソフィー・ターナー出演の「X-MEN: ダーク・フェニックス」を最後に、今後はX-MENもMCUに登場するはずだ
同じマーベル・コミックスの登場人物でも、MCUに属さないキャラクターもいるのが、ややこしい。
その理由は、実は簡単だ。マーベル・スタジオが設立されるはるか昔、マーベル・エンターテインメントが一部のキャラクターの使用権を他の映画製作会社に売り渡したのだ。
スパイダーマンの映画化権は、ソニー・ピクチャーズに渡った。ソニーは、トビー・マグワイヤ主演でスパイダーマン3部作を撮り、さらに間もなく、アンドリュー・ガーフィールド主演で2本作った(ガーフィールド版はあまりヒットしなかった)。
その後、ソニーとマーベルは提携で合意。スパイダーマンの権利はソニーが持ち続けるが、トム・ホランド演じるスパイダーマンはMCU映画に出ても良いことになった。
ソニーはこのほかにも、マーベル・コミックスのキャラクター、「ゴーストライダー」の映画化権を獲得し、ニコラス・ケイジ主演で映画を2本製作した。ゴーストライダーの権利は2013年、マーベルに戻った。

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「ゴーストライダー」のニコラス・ケイジ
マーベル・コミックスの「ファンタスティック・フォー」と「X-MEN」シリーズの映画化権は20世紀フォックスに譲渡されたが、ディズニーが21世紀フォックスを買収したため、今年中にも両シリーズの権利はマーベル・スタジオに戻る見通しだ。その場合、両シリーズのキャラクターも今後、MCU映画に登場する可能性がある。
フォックスはマーベルのキャラクター「デッドプール」の映画をライアン・レノルズで作っているが、これもMCUとはきっぱり違う世界だ。
口汚くエッチでやりたい放題のデッドプールは、「大人も子どもも楽しめる」というわけにはまったくいかないキャラクターなので、シリーズの今後は不透明だ。
しかし、「デッドプール」シリーズはヒットしたし、主演のライアン・レノルズはソーシャルメディアで、ディズニー傘下になってもデッドプールに未来があるとほのめかすような内容を書いている。

フォックスはほかに、「デアデビル」の映画化権を持ち、2003年にベン・アフレック主演で映画を作った。2005年にはスピンオフ作品として「エレクトラ」を撮ったが、権利はその後、マーベルに戻った。
ユニバーサルの「ハルク」シリーズやニューライン・シネマの「ブレード」シリーズも、マーベルから一時的に権利を譲り受けた結果の産物だが、今は権利はマーベルに戻っている。MCUの一部ではない。

MCU映画はもう全部見た ほかに何を見れば?

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クラーク・グレッグが演じるフィル・コールソンは健在だ
ご心配なく。映画をコンプリートしたとしても、テレビ・ドラマがまだまだたくさんある。
- エージェント・カーター――MCU映画でヘイリー・アトウェルが演じるペギー・カーター主演のこのドラマは2015~2016年に放送された
- エージェント・オブ・シールド――クラーク・グレッグ演じるフィル・コールソンが、「アベンジャーズ」に続き登場するドラマで、2013年から放送が続いている
- インヒューマンズ――米ABCで1シーズンのみ放送された。地球と接触する超能力を持った異星人を描いた
- ランナウェイズ――動画配信サービスHuluで配信。自分たちの親が犯罪者だと気づく10代の若者6人を描く
- クローク・アンド・ダガー――超能力を持つ10代の若者たちの恋愛ドラマ。「スペクタキュラー・スパイダーマン」で初登場したキャラクターたちを描く
- ネットフリックスのマーベルドラマ――マーベルとネットフリックスの提携関係はもう終わったが、「デアデビル」「アイアンフィスト」「ルーク・ケージ」「ジェシカ・ジョーンズ」「パニッシャー」といった、先鋭的な作品をネットフリックスで見ることができる。特に、様々なキャラクターが集合する「ザ・ディフェンダーズ」は出色の出来だ。表向きはMCUの一部だが、作品の雰囲気はMCUよりダークで、映画との直接的なつながりはない
ここまできて、もうMCUに夢中の大ファンになったという人には、英エンタメ・サイト「Digital Spy」が作った、全ての映画とドラマを網羅した年表の完全版もある。
さらには、1980年代に大失敗したことで知られる、マーベルの最初の映画、「ハワード・ザ・ダック」を見てみるという手もある。
アヒルの姿をしたスーパーヒーローは近く、マーベルが大人向けに用意しているテレビアニメ・シリーズに主演するので、そこまでやるなら欠かせない予習だと思えばいい。
さらにディズニーは複数の新作テレビ・ドラマの計画を発表している。マイティ・ソーの弟、ロキが主演のものもあり、同社の動画配信サービス「ディズニー+」で提供予定だ。
たとえ、すでにあるマーベル作品を全部見終えたとしても、まだまだ新作は次々と登場するというわけだ。