【写真で見る】人類滅亡後に残るのは……自動車とプラスチック? 英探検家が警鐘

クレア・マーシャル、BBC環境担当編集委員

Descending into a glacier Image copyright © Helen Spenceley

揺ぎない大地に立って足元を見る。地球の奥深くまで降りていく。そこには何があるだろう? 出かけていくのはおろか、想像するのさえ難しい場所だ。

探検家で作家のロバート・マクファーレン氏は、この隠された世界を旅してきた。そこは、地質学的な「深い時間」の流れる、「分や月、年ではなく、千年紀や世、累代(共に地質学上の区分)で数える」場所だ。

地上まで戻ってきたマクファーレン氏は、「私たち人類が絶滅した後に何が残ると思う?」と問いかけている。

それがなぜ私たちにとって大事なのか、その答えも教えてくれた。

Cars in a Welsh mine Image copyright © Bradley Garrett
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マクファーレン氏にとって、この写真は中世イタリアの画家ジョットによる「受胎告知」の絵に匹敵する。

しかし、よくよく見てみると、写っているのは実は「自動車の雪崩」なのだ。

ここは英ウェールズにある、廃坑となったスレート鉱山。地元住民は40年も前から、ここに廃車を捨て続けてきた。

「私たち人間は地表面だけでなく、地下の世界の形にも手を加えている」とマクファーレン氏は語った。

人類が残す化石は、こうした車の残骸や、今はもう避けられないプラスチックの地層、あるいは集中的に飼育されている何百万頭ものウシやブタの背骨だろうか。

それとも、地球に生きる種のひとつとして、もっとまともに行動できるようになるのだろうか?

4月にはスウェーデンの環境保護活動家グレタ・トゥーンベリさん(16)の呼びかけにより、世界中で気候変動への対応を訴える抗議運動が行われた。ロンドンでは「絶滅への反逆(Extinction Rebellion)」が座り込みを行なった。

マクファーレン氏の言う「地下世界」に目を向け、自問自答するにはいいタイミングかもしれない。

「私たちは良い祖先になれるのか?」と。

The 'mouth' of the moulin Image copyright © Helen Spenceley
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マクファーレン氏によると、氷は「信じられないほどの知識の宝庫」だ。

北極で観測史上最も暑い夏を記録した2016年、マクファーレン氏は溶けた氷河の亀裂の中に降り、その知識を学ぼうとした。

グリーンランド東岸のクヌート・ラスムッセン氷河にあるような、こうした亀裂は、フランス語で製粉場を意味する「ムーラン」と呼ばれている。氷河の氷が溶け、そこに水が入り込んで形成される。

科学者たちは、氷河や氷冠が割れる速度を測るため、ムーランを利用している。

大口を開けた亀裂から、マクファーレン氏は18メートルの深さまで潜った。水流に捕まって「引き上げてほしい」という信号を出すまで、マクファーレン氏には周囲を見回し、その光景に圧倒されるだけの余裕があった。

Descending into a glacier Image copyright © Helen Spenceley
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深く潜れば潜るほど、水の色は濃い青に変わり、周囲の氷も古いものになる。

「下降するごとに共に、時代をさかのぼる」とマクファーレン氏は説明する。たった数分の間に、数百年の時を旅したのだと。

「とてつもなく巨大な異世界の生き物の中に入っていくようだ。(中略)音が響き渡る、青い筒状の生物だ」

水流に飲まれる直前まで、マクファーレン氏は「落ち着いて穏やかな気持ちだった」と話した。

「水流に振り回されて、もみくちゃになったとき以外は美しかった」

In Greenland Image copyright © Helen Spenceley
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マクファーレン氏によると、気候変動により氷河の後退が急速に進んでいるため、グリーンランドの小さな集落クルスクの住民は、今や氷河から大きな氷が、まるで母牛から子牛が産まれるように「分離する」際の音が、聞こえなくなってしまったと話す。

つい最近まで、氷の割れる雷のような音はこの集落の生活の一部だった。

クルスクの人たちは「とてつもない変化が、ものすごい勢いで起きていると実感している」と、マクファーレン氏は言う。

両手で球を作り、地球と、氷で覆われた北極と南極を表しながら、マクファーレン氏は海面上昇についてこう言う。

「今や氷がどうなるかによって、自分たち人間がどうなるかが決まる」

ウッド・ワイド・ウェブが教えてくれること

Claire Marshall and Robert MacFarlane Image copyright Phil Coomes
Image caption ロンドン北東部に広がる広大なエピングの森で、マーシャル記者がマクファーレンさんに話を聞いた
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しかし、幸いなことに、何もかもがやがて訪れる絶滅の予兆というわけではない。

マクファーレン氏は、「不思議と奇跡」であふれた世界は、身近な場所でも見つかると話す。たとえば自分の場合は、自宅のある英ケンブリッジに近いエッピングの森だと。環境の専門家と一緒に森を歩き、地中で樹木と菌類が織り成す関係、「ワールド・ワイド・ウェブ」ならぬ、「ウッド・ワイド・ウェブ」について教えてもらったという。

木々や菌類の関係は、「灰色の王国」とも呼ばれる。

Robert MacFarlane Image copyright Phil Coomes
Image caption マクファーレン氏
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ブナの新芽に微笑みかけながら、「私たちの足元からからわずか20センチ下がったところで、目を見張るようなソーシャル・ネットワークが生まれている」とマクファーレン氏は説明した。

「森は1本1本の木の集合体ではなく、木のコミュニティーだ。これを知っているだけで、普段歩いている場所が違って見える」

人類の「ワールド・ワイド・ウェブ(www、ここではインターネットを指す)」は、その誕生からまだ30年もたっていない。

一方、木の根と菌糸類は4億年もの間、地下でコミュニケーションを取り、互いを助けてきた。

この関係がうまく行っていることは明らかだ。広島の爆心地に最初に戻ってきた有機物は菌類だった。菌類が絶滅するようなことはなさそうだ。

マクファーレン氏は、「ウッド・ワイド・ウェブ」から学び、「胞子の言葉を学ぶ」ことで人類が助かるかもしれないと考えている。

地下450メートルの希望

Onkalo nuclear waste storage Image copyright Posiva Oy
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フィンランドの地下にある核燃料貯蔵庫「オンカロ」は、人類から永遠に隠されなくてはならないもの、つまり放射性廃棄物を埋めるために設計された。

オンカロとは、隠れる場所という意味だ。貯蔵庫は、フィンランド西岸の地下450メートル、19億年前の岩盤を掘削して造られた。

わざわざ行くには、気が滅入る場所のはずでは? しかしマクファーレン氏は、オンカロの中で「奇妙なほど、予想外に気分が明るくなった」と話した。

放射性廃棄物は向こう数万年にわたり、人類にとって危険を意味する。

オンカロのような場所は、設計・建築した人間よりも長く、千年以上、あるいは人類という種よりも長く残らなければならない。

Inside Onkalo Image copyright Posiva Oy
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「オンカロは地獄の黙示録的な場所だろうと、どこよりも暗澹(あんたん)たる場所だろうと思っていた。人類が作り出した最悪のものを、押し込めた場所なのだから。けれども実際には、今まで訪れた中でも特に希望に満ちた場所のひとつだった」とマクファーレン氏は話した。

「協力とコミュニケーションの賜物だったので。恐ろしく複雑な工程で建築されている。ピラミッドですら、5000年しか持たないというのに」

「熟考されたエンジニアリング、科学的知識、そしてコミュニティーの協力によって生まれたひとつの成功例だ。オンカロにおける考え方は、良い祖先になるためのお手本だ」

「どうやって良い祖先になるか。それこそ、今の私たちがいつでも考え続けなくてはならない問題だ」

「身動きの取れない」

Paris catacombs Image copyright © Laura Brown
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マクファーレン氏はまた、パリの地下にある「見えない街」の住民にも接触した。

パリの道路の地下には、全長321キロメートルにおよぶカタコンベ(地下墓地)と採石場が広がっている。

マクファーレン氏は3日にわたりこの迷宮を探索した。時には「トカゲのように」頭を横向きにしながら進まなくてはならない場所もあった。これほど長い間、空も太陽も見ずに過ごしたのは初めてだったという。

ふと目に留まったこの彫刻を、マクファーレン氏は気候変動の問題に悩む人類に似ていると話した。

「古い石から半身を乗り出して、もう半身は現在という空気に触れている。両方の状態に捕まって、前に進むことも後退することもできない」

地質学的な時間

Notebooks Image copyright Robert MacFarlane
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マクファーレン氏が10年にわたる地下探検の詳細を、ノートに記録している。英ヨークシャーの湿地帯の下にある氷の中で宇宙の起源を探ったときにも、イングランド南部メンディップ・ヒルズの古代の洞窟に潜ったときも、ノルウェーの洞窟壁画を見るために人里離れた北極圏を訪れたときも、スロヴェニアの高地を下ってくるときも、ノートを携えていた。

マクファーレン氏はノートに記録し続けた内容を、このほど「Underland(地下世界)」という1冊の本にまとめた。長年の探検にそうして一区切りがついた今、こうは思わないのだろうか。

自分たちの生き方を人間があれこれ気にすることに、意味はあるのか。気にしても仕方がないのではないか。

人類もどうせ近いうちに絶滅するのだし。

Notebook Image copyright Robert MacFarlane
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答えは「ノー」だった。マクファーレン氏は、地質学的な規模の「深い時間」を意識することこそ、「人間を無気力から遠ざけ、行動するよう奮い立たせてくれる」のだと話す。

こうした時間軸で考えることで、「自分たちは何千年もの昔から何千年もの未来にわたって伸びる網の上で、次世代に贈られ、遺伝し、遺されるものの一部なのだと、そういう目線で考えることができる。そういう認識があれば、では自分が次の時代、自分たちの後に来る生命に何を残すのか、考えるようになる」

フクロウは暗闇を見ている

Whalebone owl Image copyright Robert MacFarlane
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このフクロウの彫刻は、スコットランド・ヘブリディーズ諸島の海岸に打ち上げられたミンククジラの骨でできている。

作り主はマクファーレン氏に、暗闇を歩くときのお守りにするという条件で、この彫刻を譲ったという。

お守りは効いてるのだろうか?

マクファーレン氏の答えは「イエス」だった。

「大事なのは暗闇の中で、どうやって前を見るかだけではない。暗闇を暗闇として見ることも教えてくれた」

つまり?

「人間は素晴らしいと同時に、最悪な種だということだ」

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写真は全て著作権者に帰属します。

(英語記事 Glimpsing a world beyond human extinction

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