警察が守るほど高級 シチリア産ピスタチオ、盗難との戦い

フレンチェスカ・マルケゼ、BBC記者、シチリア島ブロンテ

Pistacchio verde di Bronte Image copyright Getty Images
Image caption 「ピスタチオ・ヴェルデ・ディ・ブロンテ」は赤い皮の下に鮮やかな緑の実が隠れている

ニコロ・モランディ警部は、すでに9月の準備を始めていると語った。

日中には6人、夜間には12人の警官がパトロールを行う。必要となればヘリコプターも動員する。

「その他にもたくさん、予防策を実施する」とモランディ警部は話した。

モランディ警部がいるのはイタリア南部のシチリア島、その北東部にあるエトナ火山のふもとにあるブロンテという町だ。

意外に思うかもしれないが、警部のチームはピスタチオの収穫について警備計画を立てている。

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Image caption イタリアの国家警察カラビニエリは、ヘリコプターを使ってピスタチオ畑をパトロールしている

シチリアは、世界で最も賞を獲得したナッツ類、「ピスタチオ・ヴェルデ・ディ・ブロンテ」の産地だ。

中心地のブロンテでは、活火山のエトナ火山の山肌に約3000ヘクタールのピスタチオ畑が広がっている。

ブロンテのピスタチオは世界に流通するピスタチオのわずか1%に過ぎないが、値段は最も高い。「シチリアの緑の黄金」とも呼ばれ、殻を取った状態で1キロ当たり15.5ユーロ(約1900円)の値が付く。これは生産量でトップを誇る米国産とイラン産に比べて約2倍の値段だ。

地元商工会議所のエンリコ・チンバリ氏は、ブロンテ地域だけで230軒の認可取得済みピスタチオ農家があり、統制原産地呼称(DOC)によって保護されていると説明する。DOCのピスタチオは味も豊かで、鮮やかな緑色が長く続くことから、このような高い値を付けられるのだという。

しかし、高級なことがあだとなり、ブロンテのピスタチオは収穫期になると常に同じ問題に悩まされる。盗難だ。

窃盗犯は真夜中に車で畑に入り込み、ピスタチオを獲れるだけ獲っていってしまうのだ。

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Image caption ピスタチオ・ヴェルデ・ディ・ブロンテはすべて、手摘みで収穫される

ピスタチオの木は2年に1度しか実をつけない。シチリア島では奇数年が収穫期に当たり、2019年にも9月に収穫が行われる。

ブロンテでは2009年、収穫期に300キロ、金額にして4600ユーロ(約56万円)以上ものピスタチオが盗まれた。これを受け、ブロンテ市長は警察に対して警備強化を求めた。

この結果、イタリアの国家警察カラビニエリは2011年からヘリコプターによるパトロールを開始し、地上でも警官を増員した。

ピスタチオ農家のマリオ・プレスティアンニさんは、「正直な市民は警備強化を歓迎している。収穫期は我々のコミュニティーにとってとてもデリケートな時期なので」と語った。

「ある夜、畑のゲートを閉めようとしたら警官に止められ、大きな声で私が誰か、ここで何をしているのかと聞かれた。こうした警官がいることにほっとした」

3月に花の季節が終わり、ブロンテのピスタチオが実り始めている今、プレスティアンニさんを含む農家の人たちは、今年の収穫は前回2017年の1250トンを超えるとみている。

収穫は完全に天候に左右されるが、前々回の2015年の収穫量は1400トンだった。

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Image caption ブロンテのピスタチオ農家は、輸出拡大に力を入れている

ブロンテのピスタチオは現在、80%が輸出されているが、これをさらに拡大しようという動きもある。主要輸出国はフランス、ドイツ、日本、スイス、そしてアメリカだ。

「輸出を増やすためにインターネットでマーケティングを行い、毎年最低でも6回は世界中で行われる展示会に参加するようにしている」と、ピスタチオの販売を手掛けているフランチェスコ・ディ・サーノ氏は説明する。

「ニュルンベルクやドバイのトレードショーにも出向いているが、販促側の支援拡大が必要だ。どうやって我々とコンタクトを取ればいいか、外国の人たちは知らないので」

「われわれに対しても、ピスタチオのさまざまな消費方法について教えてもらいたい。そうすれば、今まで以上にたくさんの市場に供給できる」

Image caption シチリア島の地図

ピスタチオは毎年、ブロンテの町に2000万ユーロ(約24億6000万円)の収入をもたらしていると推計されている。

またピスタチオ・ヴェルデ・ディ・ブロンテそのものに加え、複数の食品会社がブロンテで営業し、シチリア産だけでなく、DOCではない産地や外国産のピスタチオを加工している。

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Image caption ピスタチオはシチリア島のデザートに幅広く使われている

「ブロンテの労働者は長期間にわたって経験を積んでいるため、たくさんの外国産ピスタチオもここで加工している」と、地元の旅行会社プロ・ロコのヴィンチェンゾ・カピッツィさんは説明する。

ここでは単なる殻むき作業から、料理の材料として粉やペースト状にする加工までが行われる。ピスタチオはさまざまなシチリアのデザートで使用されるほか、スパゲッティに混ぜるペストなどにも使われる。もちろん、ジェラートも忘れてはいけない。

また、ブロンテでは毎年ピスタチオ祭りが開催され、欧州各地から観光客が訪れている。

Image caption ピスタチオ農家のマリオ・プレスティアンニさんは、警察のパトロールを歓迎していると話した

ピスタチオは中東原産で、9~11世紀にシチリア島を支配していたイスラム系のムーア人によってもたらされた。

今でも、ピスタチオはその頃と同じ方法、つまりひとつずつ手作業で収穫される。プレスティアンニさんのような農家は収穫期の間、畑の隣に建てられた小屋に寝泊りする。

「収穫が終わったら殻をむいてから平らに広げ、シチリアの太陽に3日間当てて乾かす」と、プレスティアンニさんは行程を説明してくれた。

「毎日、日が暮れたら夜の湿気を避けるために回収する。昼間も急な雨から守るために迅速に動かなくてはいけないことがある」

その後、ピスタチオは倉庫に保管され、加工のために地元の工場に運ばれる。

9月の収穫期に向けた準備を進めながら、プレスティアンニさんは警察も軽微の準備を始めていることが嬉しいと話した。

「ピスタチオ畑は町の中心地から離れた場所にある。武装した窃盗グループがバンで乗りつけ、ピスタチオを一度にごっそり盗んでいかないよう、警察が夜間にもパトロールしてくれるのがありがたい」

(英語記事 The pistachios that need police protection

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