ボリス・ジョンソン氏の経歴は 英保守党党首選

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ボリス・ジョンソン前外相は、イギリスで最も有名な政治家の1人だ。保守党党首選の議員投票で第1位を維持し、ジェレミー・ハント外相との決選投票に臨む。次期党首は自動的にイギリスの首相となる。決選投票の結果は、22日に発表の予定。

しかし下院議員、ロンドン市長、そして外相と積み上げてきたジョンソン氏の経歴には、異論と批判がつきものだった。

雑誌編集者から下院議員へ

週刊誌スペクテイターの編集長、そしてBBCのニュース風刺番組「Have I Got News For You」の出演者として、ジョンソン氏は早くからその破天荒なキャラクターが有名になった。

2001年に、オックスフォードシャーのヘンリー・オン・テムズ選挙区で前任のマイケル・ヘスルスタイン元国防相に代わり立候補し、議員となった。

同性愛者の権利

ジョンソン氏は他の多くの保守党議員よりは、リベラルだとされている。ジャーナリスト時代には、地方自治体が同性愛を積極的に宣伝するのを禁止する法案の撤回に疑問を投げかけたこともあった。しかし議員になってからは立場を変え、国家が国民の生活に干渉してはならないと主張した。シビル・パートナーシップ(市民婚)制度の導入にも賛成票を投じている。

Image caption ジョンソン氏は2004年、BBCのニュース風刺番組「Have I Got News For You」に出演していた

ジョンソン氏の行動は議論を呼び続けた。

ジョンソン氏はスペクテイター時代、リヴァプール出身のエンジニア、ケン・ビッグリ-氏がイラクで誘拐され殺された事件について、リヴァプール市民が「過度な」悲しみを示して同情を買おうとしたとする批判記事を掲載した。

マイケル・ハワード保守党党首(当時)は2004年10月、この記事についてジョンソン氏にリヴァプールへ行き謝罪するよう命令した。

また翌11月には、スペクテイターのコラムニスト、ペトロネラ・ワイアット氏との交際についてハワード党首に誤情報を伝えたとして、影の芸術相を解任されている。

しかし、翌年になると早くも、党内の要職に返り咲く。新たに保守党党首となったデイヴィッド・キャメロン氏が、ジョンソン氏を芸術相よりも上位の影の教育相に任命したのだ。

これを受けてジョンソン氏はスペクテイターでの仕事を辞めた。しかしそれ以降も、英紙テレグラフでコラムニストとして寄稿し続ける。

ある時にはパプア・ニューギニアを「食人文化と首長殺し」と結びつける記事を書き、後から同国の全国民に謝罪している。

2007年までに、ジョンソン議員はイギリス政界でもっとも力のある役職のひとつに目をつけた。

ロンドン市長(2008~2016年)

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2008年に労働党のケン・リヴィングストン氏を破ってロンドン市長となったジョンソン氏は、2016年まで務めた。ジョンソン氏が担った公職の中では、最も長い在任期間だった。

ジョンソン氏は、ロンドン市長時代の功績として犯罪、住宅、そして交通政策の成功を上げている。

ジョンソン陣営が運営するツイッターアカウントも、市長時代の功績をイラストで示しながら「ロンドン市長として、我々は約束を守り、市民全員のために実現した。同じことをイギリス全体にしたい」と呼びかけている。

犯罪

ジョンソン氏の市長在任中、ロンドンの殺人発生率は100万人当たり22人から12人に減少した。

しかしこの数字は、前任のリヴィングストーン氏の2期目からすでに下がり始めていた。

一方、ジョンソン氏が就任してから最初の数年は、刃物による犯罪が15%増加した。ただし、これも2012~13年以降は減少に転じている。

ジョンソン氏は、暴力犯罪に対処するため、警官による職務質問の強化を支持した。また、イギリス政府が警察官の削減を行う中、ロンドンでは警察官の数を維持すると話していた。

内務省の発表によると、2008年3月から2016年3月の間に、ロンドンの警察官の数は3万1460人から3万2125人にわずかに増えている。一方、イングランドとウェールズでは、全体で1万7603人減った。

住宅

購入可能な新築住宅の数は2016年3月までに10万1525軒増加し、うちグレーターロンドンの自治体が9万4001軒を提供した。

これはリヴィングストン時代によりも増加しているものの、「購入可能な住宅」の定義が2011年に変更されたため、直に比較することはできない。

○交通

ジョンソン氏は、それまでロンドン市内を走っていた2両編成のバスを廃止した。細い道には不向きなことと、運転士の目が行き届かずきせる乗車を助長するためとしている。

その代わりとして「ルートマスター」と呼ばれる旧式の2階建てバスの復刻版を展開したが、この動きは単なるうぬぼれだと批判された。開かない窓に対する苦情や、ハイブリッドエンジンの問題があったほか、通常のバスよりも維持費が非常に高かったからだ。

また、ジョンソン氏による交通政策で最も有名なのは、2010年7月から始まったレンタサイクル、通称「ボリス・バイク」だ。

ジョンソン氏は自ら頻繁にレンタサイクルに乗り、便利さをアピールした。2016年の利用者数は103万回以上に上った。

しかし、年間1100万ポンドという維持費を批判する声もある。また、そもそもレンタサイクル計画そのものは、前任のリヴィングストン市長時代にすでに発表されていたという指摘もある。

ロンドン五輪

2012年のオリンピック(五輪)に、ジョンソン氏はロンドン市長として関わった。

イギリスがロンドン五輪で初めて金メダルを取った際、お祝いとしてジップラインに乗ったジョンソン氏が途中で引っかかり、宙吊りのまま動けなくなった顛末(てんまつ)は、特に印象的だった。

ロンドン五輪はおおむね成功したと評価されており、経済にも大きく貢献した。

しかし、五輪施設のその後については疑問が噴出。特に、オリンピック・スタジアムをサッカー場に改築する計画には批判が集まった。

2017年に独立団体が行った調査によると、この改築にかかる費用は3億2300万ポンドと、当初試算されていた1億9000万ポンドを大きく上回った。

ガーデン・ブリッジ計画

市長時代の後半、ジョンソン氏は故ダイアナ妃をしのぶものとして、テムズ川に庭園つきの橋をかける計画に着手した。

この橋の構想は1998年に女優のジョアナ・ラムリー氏が発案したもの。歩行者専用の橋には木や草花が植えられ、公的資金と個人からの寄付でまかなわれるというものだった。

しかし、この計画はジョンソン氏がロンドン市長を退任したとの2017年に破棄された。それまでに5300万ポンドが計画に費やされたが、うと4300万ポンドが国の財源からの支出だった。

外相(2016~2018年)

ジョンソン氏は2016年にロンドン市長の任期が切れる前に、議会に戻りたいと考えた。2015年には、ロンドン北西部アックスブリッジおよびサウス・ライスリップ選挙区で議席を獲得した。

その後、選挙区近くのヒースロー空港で拡張計画が持ち上がると、ジョンソン氏はブルトーザーの前に寝転がってでも阻止すると反対を表明した。

ロンドン市長時代には、ジョンソン氏は代替案としてテムズ川河口の島に空港を作る計画を指示したが、このアイデアは費用と環境面の問題で却下された。

しかし、2018年6月にイギリス下院がヒースロー空港拡張計画の採決を行った日、ジョンソン氏は投票を棄権。代わりに、アフガニスタンを公式訪問した。

2016年、キャメロン氏に代わって首相に就任したテリーザ・メイ氏に、ジョンソン氏は外相として内閣に迎えられた。

ジョンソン氏はこの時の党首選にも立候補していたが、マイケル・ゴーヴ現環境相の立候補を受けて取りやめた経緯がある。

欧州連合(EU)離脱の是非を問う国民投票前には、ジョンソン氏の外相という立場が離脱派にとってプラスに働いた。

しかし、ジョンソン氏の外相起用には驚きの声も上がった。自由民主党のティム・ファロン党首は、ジョンソン氏は外相としての仕事よりも、「怒らせた相手の国に謝罪して回る方で忙しくなる」だろうと皮肉に予測した。

実際、ジョンソン氏は外相になる前から、他国やその元首に侮辱的な発言を重ねていた。

たとえば2016年には、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領とヤギを題材にした詩をスペクテイター上で発表した。この詩はエルドアン大統領の表現の自由規制を批判するために開かれたコンテストに入賞し、1000ポンドを獲得している。

また、リビア内戦の激戦地スルトについて、「死体を撤去すれば」ドバイのように発展するかもしれないと発言した。

ロシアの外交官追放

ジョンソン氏は外相時代、ロシアへの強硬姿勢を支持した。

2018年3月にイギリス国内でロシアの元スパイ、セルゲイ・スクリパリ氏と娘のユリアさんにロシア製の神経剤が使われたとされる殺人未遂事件では、ロシア外交官の国外追放を発表した。

この件では、イギリスを含むEU加盟国やアメリカやカナダ、オーストラリアなど29カ国で合わせて140人以上のロシア外交官が追放された

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Image caption イラン系英国人のナザニン・ザガリ=ラトクリフさんは、2016年からイランで拘束されている

イラン

しかし、イランで2016年にスパイ容疑で5年の禁錮刑を受けたイラン系英国人のナザニン・ザガリ=ラトクリフさんについては、ジョンソン氏は議会で謝罪するはめになった。

ジョンソン氏は、ザガリ=ラトクリフさんがイランで逮捕された当時、ジャーナリストの指導に当たっていたと発言。しかし、本人は休暇でイランに来ていたと話していた。

その後、ジョンソン氏はザガリ=ラトクリフさんが休暇中だったと明言したものの、自分の発言が事態に影響を与えたとは思わないと述べた。この発言はザガリ=ラトクリフさんの家族によって否定されている。

ジョンソン氏の発言から数日後、ザガリ=ラトクリフさんはイランの法廷で、反政府プロパガンダに関わった罪で有罪となった。

サウジアラビア

サウジアラビアについてジョンソン氏は、中東で代理戦争に関わっていると発言し、首相官邸から叱責を受けた経緯がある。

サウジアラビアはイエメンの軍事行動に関わっていたが、ジョンソン氏はこうした発言にもかかわらず、イギリスの対サウジ武器輸出を認め続けた。

2018年にはデイリー・テレグラフに、ムスリム(イスラム教徒)女性の一部が身に着ける、全身をすっぽり隠す「ブルカ」が「郵便ポスト」のようだと書き、批判された。

しかしこの時点でジョンソン氏はすでに、メイ首相のEU離脱協定に反対して外相を辞任していた。

EU離脱派の先鋒として

2016年の国民投票でジョンソン氏は、公式の離脱運動「Vote Leave(離脱に投票を)」の主導者として活動した。

特にEUへの攻撃と、ブレグジット(イギリスのEU離脱)による恩恵を発信して注目を集め、自身について「ケーキをとってしっかり食べる」派、つまり二兎を追って二兎を得るのだと述べている。

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しかし、ジョンソン氏が離脱と残留どちらを支持しているのかはいつもはっきりしない。例えばロンドン市長時代には、EU単一市場に加入している恩恵について話していた。

EU加盟への賛否を問う2013年のテレグラフ記事では、ジョンソン氏はブレグジットはイギリスの諸問題の解決にはならないと述べている。

一方でジョンソン氏は、自分はEU加盟について国民の判断を仰ぐ計画は支持すると明言している。

国民投票の期間中、ジョンソン氏は離脱のメリットや「主導権と取り戻す」という主張を繰り返し、残留派からひっきりなしに批判を受けた。

3億5000万ポンドという主張

最も物議をかもしたのは、イギリスがEUに支払っている金額をめぐる発言だった。ジョンソン氏はイギリスはEUに毎週3億5000万ポンド(約485億円)を支払っていると主張し、離脱派の広告バスにもその金額を大きく掲げて全国を走らせた。

この主張については、イギリスに対する払い戻しを考慮に入れていないこと、EUへの拠出金はその後イギリス国内で使われていることなどから、3億5000万ポンドという金額は間違っていたという批判が出た。

今年5月にはこの件をめぐり、虚偽の情報を拡散したとしてジョンソン氏に出廷命令が出ていたが、不起訴となっている。

ジョンソン氏はEU離脱が景気後退を招くとの懸念を否定しており、経済への影響を指摘したある調査結果についてプロパガンダだと説明した。

また、メイ首相が続けたEUとの交渉や、その結果2018年にまとまった離脱協定についても厳しい批判を行い、強硬的なブレグジットを推進している。

2018年7月に提出した辞表では、メイ首相の協定はイギリスを「植民地状態」にすると述べた。

その上で、現在でも協定の有無に関わらず、イギリスは離脱期限の10月31日にEUを出るべきだと主張している。

(英語記事 Boris Johnson: What's his track record?

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