【解説】 香港の駅襲撃、関与疑われる「三合会」とは? 香港政府とのつながりは

Men in white T-shirts with poles are seen in Yuen Long after attacked anti-extradition bill demonstrators at a train station, in Hong Kong Image copyright Reuters
Image caption 白い服に身を包んだ覆面集団は、黒い服を着た人々を標的にした。黒はデモ隊を象徴する色だ

香港の元朗区にある鉄道の駅で21日午後10時半ごろ(日本時間午後11時半ごろ)、木製や金属製の棒を持った覆面集団が利用客や通行人を襲い、45人が負傷した。この日行なわれた、犯罪容疑者の中国本土への引き渡しを認める「逃亡犯条例」の改正案に対する大規模な抗議デモに参加した市民が被害に遭った。

オンライン上では、残忍な襲撃の様子をとらえた動画が瞬く間に拡散され、香港に衝撃が走った。

覆面集団をめぐっては、中国のマフィアとしても知られる、香港で活動すする犯罪組織「三合会(トライアド)」と関係があるのではないかとの憶測が広がっている。

この三合会とは、そもそもどういう組織なのか。そして、この組織が今回の襲撃事件に関与している可能性はあるのだろうか。

三合会とは

「三合会」は香港にある複数の犯罪組織の総称だ。英オックスフォード大学の犯罪学の教授で、組織犯罪の専門家のフェデリコ・ヴァレーゼ氏によると、「三合会」とは独自のルールや儀式を確立している、「極めて特定の地域に限定された」犯罪集団だという。

「ふだんはみかじめ料の取立てや、売春、薬物取引などを行なっている。国際的組織ではなく、地元地域で活動している」

「香港国内には複数の三合会がある。特に悪名高いのは、「14K」、「新義安」、「和勝和」などだ。

三合会は階級を重視する組織で、厳格な行動規範で縛られ、仲間同士は血盟を結ぶ。主に香港の特定地域で活動するが、地元では有名だ。活動はしばしば香港映画の題材になり、そうした映画は犯罪集団を美化していると批判される。

2006年に公開された、米マーティン・スコセッシ監督の「ディパーテッド(The Departed)」は、三合会を描いた香港映画「インファナル・アフェア(Infernal Affairs)」のリメイクだ。

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Image caption 覆面集団に襲われ、怪我をした男性。背中の至るところに生々しい傷が残っている

三合会の構成員

メンバーのほとんどは労働者階級出身で、高等教育を受けていないと、ヴァレーゼ教授は言う。

年齢は様々だ。多くが若い頃に集団に加わる傾向にあるものの、若者だけのギャング集団ではないという。

若いメンバーは、「地元地域で勧誘される」傾向にあるという。「地元のギャングが『有望な若者』に目を付けている」と教授は話す。

勧誘されると、メンバーは儀式に参加する。鶏の頭を切り落とし、その血を杯に落とし、出席者で回し飲みする。続いて新人に向かって三合会の規則が読み上げられる。

ヴァレーゼ教授によると、儀式の参加者は全裸または半裸のことが多い。「皆が兄弟だとされる偽の家族に加わるために、これまでの自分のアイデンティティを忘れなければならないという考え」に基づくものだという。

「一度仲間に加われば、生涯ずっと仲間でいられる」一方で、一部のメンバーは事業を立ち上げ、「休止」メンバーと化すという。

香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストの2017年の記事によると、人口730万人の香港市内には、約10万人の三合会会員が存在するという。

香港警察によると、2018年には三合会関連の事件が1715件発生している。

犯罪の多くは、深刻な傷害事件だが、ライバル集団との紛争も勃発している。

襲撃犯は雇われたのか

21日の襲撃事件については、金で雇われた暴漢の犯行ではないかとの声が広がっている。

同じようなことが言われるのは、今回が初めてではない。

2014年には、数万人が民主化を求め、市内の複数の通りを占拠した。これは後に、雨傘運動として知られるようになった。

デモ開始してから数日後、労働者が多く暮らす九龍半島中部の繁華街、旺角(モンコック)のデモ会場の1つで、テントやバリケードを撤収しようとしていたデモ隊が大勢に殴る蹴るの暴行を受け、暴力沙汰に発展した。

警察によると、この襲撃事件では、三合会と関係する19人が逮捕された。

ヴァレーゼ教授と香港城市大学のレベッカ・ウォン博士は、2014年の襲撃事件を共同で研究し、複数の目撃者と、三合会関係者2人に聞き取りを行なった。2人のうち、1人は三合会の幹部だった。

ヴァレーゼ教授とウォン博士は、襲撃犯は旺角郊外を拠点とする三合会に属し、デモ隊襲撃の報酬を受け取っていたと結論した。一方で、複数地区の三合会は、「自分たちの地域への侵略を受けた」と主張した。

21日の事件に三合会は

警察関係者は、サウス・チャイナ・モーニング・ポストに対し、襲撃犯の中に、14Kや和勝和のメンバーが含まれていると見ていると述べた。

ヴァレーゼ教授は、21日の襲撃事件は「2014年に起きたこととうりふたつ」だが、通行人も標的にされていることから、今回の襲撃の方が「より深刻」だと指摘する。

「人を殺すことではなく、怖がらせて追い払うこと」と、デモ隊を威圧することが目的だったと見られるという。

「これは意図的な戦術だと思う。三合会は致命的な暴力をふるうことでは知られてはいないものの、人を殺そうと思えば殺せるので」

さらに注目すべき点は、2014年と今回の事件は、市内中心部の商業地区を現場に選ぶ抗議行動と異なり、いずれも労働者が多く暮らす地域で発生しているということだ。

「三合会はどんな場所でも活動するわけではない。より国際的で、多様性のある繁華街を襲撃するのは、実際には難しいのかもしれない」

Image caption デモ隊が襲撃された元朗駅(Yuen Long station)と、デモ集会(Pro-democracy rally)が開かれた場所の位置関係

三合会と香港当局のつながりは

デモ隊や活動家は、以前から三合会と当局にはつながりがあると主張してきた。しかし、そのたびに当局に強く否定されてきた。

2014年の襲撃を受け、野党・民主党の涂謹申(ジェイムス・トゥ)議員は、民主化を求めるデモに参加した「市民を分散させるために、組織的に編成された力や、さらにはトライアド集団までもを」使ったとして、政府を非難した。

一方、香港政府と警察は、三合会との結託を否定した。

21日の襲撃事件では、多くのデモ隊や、民主派の議員たちが、対応が遅いと警察を非難し、襲撃犯が現場からいなくなった後に警察が駆けつけたと主張した。しかし警察は、そのような物言いは「中傷」だと一蹴した。

一部の研究者は、暴漢に報酬を払って標的を襲わせるやり方は、中国本土でとりわけ深刻な現象になっていると言う。中国の地方政府は、「政策を促進し、地域社会からの正式な了承を引き出すため」に、犯罪者に頼っているのだと。

しかし、香港政府は高い自治性を維持しており、司法制度も立法制度も、中国本土と異なる。暴漢を雇い政策を進めるなど、香港でよくあることではない。

(取材:ヘリエ・チュン、クリストファー・ジャイルズ)

(英語記事 Were triads involved in Hong Kong violence?

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