ボリス・ジョンソン新首相の公約、実現すると締めておいくら?

BBCリアリティーチェック・チーム

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英与党・保守党の党首に選ばれ、自動的に首相となったボリス・ジョンソン氏は24日、首相としての最初の演説で、「この国をより良く変えるため決断する」方針の一環として、さまざまな財政支出を公約した。

テリーザ・メイ前首相の後任としてロンドン・ダウニング街の首相官邸前で報道陣を前にした新首相は、警察増強や光ファイバーブロードバンドの全国的な拡充などを次々と約束した。税制改革も検討していると示唆した。

さて、では、この買い物リストには実際いくらかかるのか。

○ 警官をたくさん増やす

「皆さんの街をもっと安全にするのが私の仕事だ。そのために手始めとして、街中をパトロールする警官を2万人追加する」

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計画:2022年までに警官を2万人新規採用

それはつまり:イングランドとウェールズには現在、12万2000人の警官がいる。2010年にメイ氏が内相となった当時は、14万3000人だった。

ダウニング街10番地の住人となったジョンソン氏は、メイ氏による警官削減をほぼ全て元に戻すと繰り返した。

警察官の人数と暴力事件の頻度にどういう因果関係があるのか、人によって異論がある。メイ氏は、警官削減と暴力事件の増加に、直接的な関係はないと主張していた。

一方で、ロンドン警視庁のクレシダ・ディック警視総監は、「一定のつながり」があると述べていた。

費用:ジョンソン氏が提示した予算額は11億ポンド(約1485億円)。

ロンドン以外の警官の場合、2016年の最低賃金は約2万5400ポンド(約360万円)だった(ただしこれは、警察組織によって異なる。イギリスの警察は地方自治体ごとに組織されている)。

この給与で2万人を採用するとなると、年間で約5億ポンドになるが、2年間の訓練を終えると給与、つまり費用はさらに増える。

通常は勤続4年を過ぎると、年収は3万3700ポンド(約460万円)になる。これもやはり、ロンドン以外の話だ。つまり、2万人分となると約7億ポンドだが、ここに訓練費用は含まれていない。

ノッティンガムシャー警察は2012年、警官1人あたりの新規採用と研修にかかる費用は約1万3000ポンド(約180万円)と推計した(訓練期間中の給与は含まれない)。

これをもとにすると、新人警官2万人の採用・訓練費は計約2億5800万ポンド(約361億円)になるが、これも警察組織ごとに異なる。

ジョンソン派のキット・モルトハウス下院議員(保守党)は、費用削減のため、すでに警官としての訓練を受けているパートタイムの特別警官を採用する予定だと話す。

○光ファイバーブロードバンド

「もっと安全な町並み、もっと良質な教育、素晴らしい新しい道路と鉄道のインフラ、光ファイバーブロードバンド」

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計画:政府はすでに、2033年までに国全体に光ファイバーブロードバンドを普及させる方針だが、ジョンソン氏はこれを2025年までに実現すると約束した。

それはつまり:光ファイバーブロードバンドを使うと、高速光学式通信ケーブルが建物内に行き渡り、銅線は必要なくなる。

英情報通信庁(Ofcom)は今年5月、光ファイバーブロードバンドを使う英国内の建物は7%のみだと発表した。これを6年間で100%に増やすのは大事業になる。ジョンソン氏がこれをどうやって実現するつもりなのか、詳細はまだ明らかになっていない。

費用:ジョンソン氏はこの実現には公的資金が必要になるだろうと述べつつ、具体的な金額は提示していない。

それなりの利益が見込める人口密集地では民間事業者が敷設費を負担するだろうが、遠隔地では政府補助金が必要になるかもしれない。

政府の現行計画では、特に遠隔地にある住居・事業所(全体の10%)に光ファイバーブロードバンドを通すには、30億~50億ポンドがかかる見通し。これを当初予定の14年間ではなく6年間で完遂するためには、費用は当然ながらかさむと思われる。

約300億ドルという数字が取りざたされているが、政府資金と民間投資の割合がどうなるのかは不透明だ。

○学校に資金

「小学校と中学校の生徒1人あたりの支出を増やす」

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計画:イングランドの小学校と中学校で生徒1人あたりの予算を増やす。

それはつまり:生徒1人あたりの予算を少なくとも5000ポンド(約70万円)確保したいというのが、ジョンソン氏の主張だ。保守党党首選の最中には、削減された教育予算を復活させるつもりだという発言もしたが、これはさらに費用がかかる。

下院教育特別委員会の議員たちは、教育予算復活には「数十億規模の資金注入」が必要だと話す。

費用:生徒1人あたり5000ポンド確保するとはつまり年間約5000万ポンドで、これは比較的安上がりだ。

しかし以前の予算削減を復活させるとなると、推定46億ポンドが必要になる。一方で教職員組合などは、各地の学校には計126億ポンドの追加予算が必要だと主張している。

○税率40%の対象を引き上げ

「所得税の出発点を引き上げるべきだ。財政的歯止めのせいで高税率の枠の中に捕らわれたままの大勢を助けるため」

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計画:高税率の対象となる所得を5万ポンド(約700万円)から8万ポンド(約1100万円)に引き上げる。

それはつまり: 今の制度では、個人の年収5万ドル以上の収入は税率40%で課税される。つまり、年収5万5000ポンドの人は、5000ポンドについて4割の税金を払う。

ジョンソン氏が党首選の間に概要を発表した計画では、年収8万ドルを超えた分の収入について、税率40%が適用されることになる。ただし、スコットランド自治政府は独自に所得税率や課税枠を決めているので、スコットランドの労働者にはメリットがない。

ジョンソン氏はこのほか、国民保険の保険料支払い開始年齢を引き上げ、その減収分を、支払い終了年齢の引き上げで埋めようとしている。

国民保険は、労働者や企業が払い込むもので、国民保健制度(NHS)など公的給付の財源となる。

ジョンソン氏の税制改革案では、年収6万ポンドの人は年間1000ポンドの減税になり、年収8万ポンド以上の人は3000ポンドの減税になる(国民保険料の増額により一部の減税分は相殺される)。

しかし、この新税制で誰より恩恵を受けるのは、裕福な年金生活者だ。英財政研究所(IFS)によると、1人あたり最大6000ポンドの減税になる。年金生活者はそもそも、もう国民保険への払い込みが終わっているからだ。

そのため、すでに職場から高額の年金を受け取っている人は、所得税が減るだけでなく(税率が変わるため)、国民保険の改変に影響されない。

費用:ジョンソン氏によると、この税制改革に伴う費用は年間約100億ポンドになる。「財政的余裕」の266億ポンドからこれをまかなうことができると、新首相は説明している。

「余裕」とはこの場合、政府による借金を意味する。予想より少なく、財務大臣は合意なしブレグジット対策費として予定していた。

しかし、もしジョンソン氏が税制改革の費用をこの266億ポンドでまかなうつもりなら、恒久的な解決にはならない。この資金を使えるのは1度きりだからだ。

そのため、長期的にこの税制改革の資金を確保するには、ジョンソン氏は別のどこかで増税するか、支出削減を発表するか、あるいは引き続き借金をし続けなくてはならない。

○ 法人税減税

「この国では法人税を減らすたびに歳入が増えた」

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計画:ジョンソン氏は法人税減税について前向きな姿勢を示してきたが、どの程度減らすつもりか具体的な話はしていない。

それはつまり:企業が利益について納める法人税は2010年の28%から現行の19%に減らされ、来年には17%まで下がる予定だ。

保守党党首選を最後まで争ったジェレミー・ハント前外相は、12.5%まで引き下げるつもりだと述べていたが、ジョンソン氏はそこまで具体的な話はしなかった。

費用:ジョンソン氏は遊説先の北部ダーリントンで、イギリスでは法人税を減らすと決まって歳入が増えたと発言した。

これは事実と異なる。2010年以降では法人税減税の後に歳入が増えたこともあるが、2008年の引き下げ後は歳入も減った。

政府は現在、法人税率を1ポイント引き下げるごとに、2022~2023年の歳入は31億ポンド減るだろうと計算している。

長期的には、その減収分は追加投資や給与、消費などで一部回収できるようになる可能性もある。

(英語記事 Do Boris Johnson's tax and spending plans add up?

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