ジョンソン首相に造反した与党議員21人の顔ぶれ 英ブレグジット政局

The 21 Conservative MPs who rebelled against the party in Tuesday night's vote on blocking a no-deal Brexit Image copyright PA
Image caption 下院で首相に造反した保守党の21人

欧州連合(EU)と条件の取り決めがなくても、ブレグジット(イギリスのEU離脱)期限の10月31日にEUを出ると主張するボリス・ジョンソン首相に、与党・保守党から長老を含め議員21人が造反し、除名された。どういう人たちで、これからどうなるのか。

英下院(定数650)では3日夜、議事進行の主導権を政府から議員側に移す動議を賛成328票、反対301票で可決した。ジョンソン政権に造反する保守党議員21人が、「合意なしブレグジット」へ突き進む政府にストップをかける、野党側の動きに加わった。

この結果を受けて英下院はさらに4日には、「合意なしブレグジット」を阻止する法案を賛成327、反対299で可決。これを受けて首相は下院の解散と10月15日の総選挙実施を提案したが、下院はこれを否決した。イギリスでは2011年の議会任期固定法(FPA)により首相の議会解散権が制限されており、解散には内閣不信任案の可決、または下院議員の3分の2以上の同意が必要と定められている。

この日の下院は、解散・総選挙に議員298人が賛成したものの、56人が反対、288人が棄権した。必要な434票には136票、足りなかった。

つまり、保守党から造反した21人が、ジョンソン首相の計画遂行を相次ぎ阻止していることになる。「rebel(反逆者、抵抗者)」と呼ばれるこの21人には、保守党の長老や、デイヴィッド・キャメロン元首相やテリーザ・メイ前首相時代の主要閣僚が含まれる。

フィリップ・ハモンド

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メイ政権の財務相だったフィリップ・ハモンド議員(63)が、造反勢力の調整役を務めている。自分たちはただ単に合意なし離脱を阻止するのではなく、EUとの新しい離脱協定を議会がしっかり精査した上で施行するための時間を、確保するのが目的だと強調している。

ハモンド氏はメイ首相(当時)がEUと取りまとめた離脱協定について下院で3回、賛成票を入れた。しかし、保守党のEU離脱派はハモンド氏を敵対視。財務省トップの立場から、ブレグジットがイギリス経済にもたらす悪影響を過大に強調し続け、合意なし離脱への備えを妨害しようとしたと不信感を抱いている。

ロンドン南西にあるラニーミードおよびウエイブリッジ選挙区を代表するハモンド氏は、次の総選挙で自分の保守党公認を外そうとする動きには徹底的に抵抗すると表明。法的措置も辞さない覚悟を示している。

この選挙区の保守党協会は2日夜の時点では、ハモンド氏を公認候補として認めたものの、4日にはフェイスブックで声明を発表し、「フィリップ・ハモンドは昨晩、院内幹事によって保守党から除名された。もはや保守党下院議員ではないため、ラニーミードおよびウエイブリッジ選挙区から保守党候補として出馬する資格を失った。協会は新しい保守党候補をいずれ選任する」と表明した。

デイヴィッド・ゴーク

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メイ政権の法務相だったデイヴィッド・ゴーク議員(48)も、造反勢力の中心的存在で、その名前をもじって21人を「ゴークワード・スクワッド」と呼ぶ人もいる(訳注・「Gaukeward」は「awkward(ぎこちない)」に音が似ている)。

弁護士出身のゴーク氏は、国民投票以前のキャメロン政権でジョージ・オズボーン財務相の部下だった。合意なし離脱はイギリスにとって「大間違い」になるし、大勢の国民を失業に追い込むようなことに「加担」するつもりはないと発言し続けている。

ロンドン北西にあるサウスウエスト・ハートフォードシャー選挙区では、ゴーク氏から党公認を外すよう求めるブレグジット派の声が年初から出ていた。

ダウニング街の首相官邸からも公認を外すと脅されたゴーク氏は、自分の政治生命よりも国益を優先して政府に反対票を入れる覚悟だと話していた。

首相官邸は反対意見を「一掃」するつもりだと、ゴーク氏は見ていた。

ドミニク・グリーヴ

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ハモンド氏やゴーク氏と異なり、元法務長官のドミニク・グリーヴ氏(63)は2年前からしばしば、政府のブレグジット交渉に強く反対してきた。メイ前首相の離脱協定には3回とも反対票を入れた。

グリーヴ氏は、ブレグジットについて2度目の国民投票を実施することを強く支持。残留も選択肢として残すべきだと主張している。

さらに、合意なし離脱は「容認できない」という立場で、たとえ政治家としての将来に傷を負っても、一貫して反対票を入れ続けるという立場を堅持している。

ロンドン北西のビーコンスフィールド選挙区を代表するグリーヴ氏は、次の総選挙も保守党候補として戦いたいが、公認を失うのも致し方ないことだと話している。

ビーコンスフィールド選挙区のジャクソン・エン氏は、グリーヴ氏に「反乱」しないよう呼びかけたものの、「長年の働き」に感謝したとツイートした。

グリーヴ氏は今年前半にすでに、地元でブレグジットに関する「活発な議論」を経て、選挙区の保守党から不信任動議を提出され、敗れている。

ケネス・クラーク

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1970年に初当選し、サッチャー政権で初入閣して以来、内相や財務相、法務相など主要ポストを歴任してきたケネス・クラーク氏(79)は現在、最長連続の議員歴をもつ議員に与えられる「下院の父」という敬称で呼ばれる。

そのクラーク氏は保守党で一番の親欧派で、欧州との関係についてはかねて党執行部と姿勢を異にしてきた。

2016年のブレグジット国民投票では離脱に反対し、EU基本条約(リスボン条約)第50条を発動して離脱交渉を開始することに、保守党議員としてただ1人、反対票を入れた。

イングランド中部ラッシュクリフ選挙区を代表するクラーク氏は、次の選挙には出馬しない可能性を示唆していた。

保守党のラッシュクリフ選挙区協会は、クラーク氏が保守党を離れるのは残念で、初当選以来の「見事で比類ない」働きぶりを称えた。

選挙区はさらに、「今後はクラーク氏への一切の手紙や通信は、ラッシュクリフ保守党協会事務所ではなく、下院での議員事務所に送っていただきたい」とコメントしている。

サー・オリヴァー・レトウィン

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キャメロン政権のランカスター公領担当相だったサー・オリヴァー・レトウィン(63)は今年春、下院議事進行の決定権を議会が掌握することでブレグジットについて妥協策を模索した議員団の中心人物だった。

レトウィン議員は今年2月にも、離脱延期をEUに要請するようメイ首相(当時)に強制する超党派法案を取りまとめた。今回の政局でもレトウィン議員がジョン・バーコウ下院議長に緊急審議の開催を要請したことから、3日と4日に政府が相次ぎ採決で敗れる事態に至った。

ロンドン・ウエストミンスターの政界を知り尽くしたレトウィン議員は、国民投票の結果を尊重しながらも欧州と緊密な経済関係を維持する必要があると考える「ソフト・ブレグジット派」。

イングランド南西部ウエスト・ドーセット選挙区を代表する同議員はすでに、次の総選挙には出馬しないと表明している。

ジャスティーン・グリーニング

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メイ政権の教育相だったジャスティーン・グリーニング議員(50)は、有権者のほとんどがEU残留派のロンドン南東部パトニー選出。次の総選挙には出馬しないと、3日に発表した。

グリーニング氏は、下院の議事がブレグジットにのみ集中しすぎているせいで、社会移動を促進する社会改革を実現するための施策がおろそかになっていると警告した。

メイ首相(当時)の離脱協定案に対しては3度にわたり反対票を入れた。離脱を支持した国民への約束を何も果たさず、残留を望む若い有権者にも何もメリットがないと批判していた。

保守党が徐々にブレグジット党に変質しつつあると警告したグリーニング氏は、ブレグジットについてあらゆる選択肢を排除せず、議会が実質的な発言権を持ち続けるため、立法作業に協力すると述べた。


ローリー・スチュワート

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メイ前首相辞任後の夏の保守党党首選にも出馬したローリー・スチュワート前国際開発相(46)は、合意なし離脱は「きっぱりした、簡単な離脱」になるという政府の言い分は不誠実だと批判し、実際には経済的・政治的不安定が何年も続くだろうと警告している。

スチュワート氏は、このような結果は「40年後まで記憶され」、保守党の評判を決定的に失墜させるだろうと話す。

造反を理由にその保守党からは除名されたが、イングランド北部カンブリアのペンリス・アンド・ザ・ボーダー選挙区を「諦めるつもりはない」し、地元選挙区の有権者を代弁していくと強調した。

次の総選挙を保守党公認候補として戦えるのかは、選挙区協会が決めることだが、自分や他の造反議員を「一掃」することは保守党らしくない対応だと釘を刺した。


アリステア・バート

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メイ政権の中東担当政務次官を務め、党内で広く尊敬されているアリステア・バート議員(64)は、ブレグジットについて党執行部と「根本的で解消しがたい」食い違いがあると話した。

弁護士出身で1983年に初当選したバート氏は、次の総選挙ではロンドン北東にあるノースイースト・ベッドフォードシャー選挙区から出馬しない意向を示している。

下院審議で発言したバート議員は、自分は党の規則に従うものの、「今は我々が一掃される番だとして、次は誰なのか」自問自答するよう、保守党の仲間に呼びかけた。

同議員はブレグジットが保守党を揺るがした結果、「私の未来は予定より早く終わるかもしれないが、自分の信条は失わない」と強調し、「私は空を見上げながら、ここを出て行く。うなだれて足元に目を落としてではない」と述べた。


サー・ニコラス・ソームズ

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ウインストン・チャーチル元首相の孫にあたるサー・ニコラス・ソームズ(71)も3日、ジョンソン首相と最後まで協議した上で、離脱期限までに協定をまとめるのは不可能だと判断して、党執行部への造反を決めた。

下院で発言したソームズ議員は、首相や他の閣僚たちの「相次ぐ不忠義にかりたてられ」、造反を選んだと冗談めかして述べた。

次の総選挙ではもう南部ミッド・サセックス選挙区を代表できなくなるのが「とても悲しい」と述べ、37年近い議員生活が終わろうとしていることに寂しさをにじませた。

議員はさらに、ブレグジット交渉を終らせるために必要な「融和と謙虚と思いやりの精神を下院が再発見」し、国が抱えるブレグジット以外の課題の検討に戻るよう「熱烈に願っている」と述べた。

デイム・キャロライン・スペルマン

保守党委員長やキャメロン政権の環境相を歴任したベテラン議員、デイム・キャロライン・スペルマン(61)は、3日の時点では政府を支持し、ブレグジットに関する議事進行の決定権を議会が掌握するという動議には反対した。

しかし、離脱期限までに離脱協定がまとまらないなら離脱期限の延期をEUに求めるという法案が提出された4日には、一転して造反に回った。

デイム・キャロラインのイングランド中部メリデン選挙区には複数の自動車部品メーカーがある。それだけに議員は、合意なしブレグジットによる業界への打撃を懸念していた。


他の造反議員

グレッグ・クラーク メイ前首相の離脱協定を協力に支持していたクラーク前ビジネス担当相(52)は、合意なし離脱は「壊滅的」な打撃をイギリスに与えるという立場。

サム・ギマ  メイ政権の大学担当相だったギマ議員(43)は、合意なし離脱は自分の選挙区の有権者にとって「打撃となり混乱をもたらす」もので、国民は合意な離脱を「信任していない」と主張している。

アントワネット・サンドバック イングランド北西部チェシャーのエディスベリ選出のサンドバック議員(50)は、合意なし離脱の可能性を完全になくすため「行動するのが大事」で、「選挙区の有権者の仕事を守るために自分の職を危険にさらしても、後悔しない」と述べた。

スティーヴン・ハモンド ウインブルドン選出のハモンド議員(57)は、保守党のブレグジット派が忠誠について「他人に説教」すると批判。BBCに対しては、「遺憾ながら」政府に造反して投票すると話していた。

マーゴ・ジェイムズ メイ政権のデジタル・クリエイティブ産業閣外相だったジェイムズ議員(62)は、造反投票は政治家として最も難しい決断だったと話した。イングランド中部ストゥアブリッジの選挙区協会は、次の総選挙にむけて公認候補探しを始めたと明らかにした。

リチャード・ハリントン イングランド南東部ワトフォード選出のハリントン議員(61)は、過去にもブレグジットをめぐり党執行部に造反したことがあり、次の総選挙には出馬しないと最近発表していた。

グト・ベブ ウェールズ北部アバコンウィ選出のベブ議員(50)も、次の選挙には出馬しない意向。合意なし離脱に反対することは、「本物の保守の伝統」に近い行為で、「おびえたり、日和見だったり、単に思考停止の忠誠心だけで議事堂内を歩いている誰より」まともなことだと強調した。

キャロライン・ノークス イングランド南部ロムジーおよびサウサンプトン・ノース選出のノークス議員(47)は、合意なし離脱では自分の選挙区の有権者の生活は悪化すると強調。選挙区の保守党協会と話し合いはもつが、無所属として出馬する可能性を排除していない。

エド・ヴェイジー オックスフォードシャー・ワンテージ選出でキャメロン政権の文化担当閣外相だったヴェイジー議員(51)は、合意なし離脱はデジタル経済に打撃を与えると話していた。

スティーヴ・ブライン イングランド南部ウインチェスター選出でメイ政権の公衆衛生政務次官だったブライン議員(45)は8月下旬、合意なり離脱など「100万分の1の確率」でしか起きないというジョンソン首相の主張を、問いただすつもりだと話していた。

アン・ミルトン イングランド南部ギルドフォード選出のミルトン議員(63)は、保守党党首選でジョンソン氏の勝利が確定する直前、技能訓練担当閣外相を辞任。合意なし離脱を実施してしまうかもしれない政府には参加できないとツイートしていた。3日午前には議事堂内で、造反派と目されていた他の議員たちとの会合に参加した。

リチャード・ベニヨン 英陸軍出身でイングランド南西部ニューベリー選出のベニヨン議員(58)は、保守党と自由民主党の連立政権時代に漁業担当政務次官だった。BBCに対しては、地元選挙区協会の「情けにすがり」、いずれは保守党議員として復帰したいと話した。


(英語記事 Brexit showdown: Who were Tory rebels who defied Boris Johnson?

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