「大きい女の子のブラウス」とは? なぜ英首相は野党党首をそう呼んだのか
アリス・エヴァンズ、BBCニュース

ボリス・ジョンソン英首相は4日、下院審議中に最大野党・労働党のジェレミー・コービン党首を「you great big girl's blouse(このすごく大きい女の子のブラウスめ)」と野次った。それを受けて5日朝には、コービン氏の自宅を訪れ、ピンクの花柄のブラウスを進呈しようとした記者がいた。しかしそもそも、「大きい女の子のブラウス」とは何なのか。なぜそれが罵倒表現なのか。そして、女性蔑視の表現だという批判は当たっているのか。
俗語表現を解説する「アーバン・ディクショナリー」によると、「big girl's blouse」とは、やたら文句ばかり口にする「ひ弱で男らしさに欠ける弱々しい男」を意味する。
ツイッターではジョンソン首相に対して、「時代遅れ」の表現を使った、「女性蔑視の間抜け」などの批判が飛び交った。「性別を題材にした虚勢を張り、政治論争を矮小(わいしょう)化した」という批判もあった。
性的少数者の中には、この表現は「単純に女性蔑視というよりむしろ、同性愛嫌悪的だ」という意見もあった。
一方で、首相に対する「攻撃材料を無理して見つけようとしている」だけだと批判を批判する声もあり、ブレグジット(イギリスの欧州連合離脱)をめぐる政界の膠着(こうちゃく)など「本当に大事なこと」から目をそらさないよう呼びかける人もいた。
文献に登場する表現のトレンドを1800年までさかのぼり検索することができる「Google Ngram」によると、この「big girl's blouse」という表現の初出は1970年代のイギリスだという。
一方で歴史家で著作家のキャサリン・カーゾン氏は、1960年代後半のテレビ連続ドラマ「Nearest and Dearest」で俳優ヒルダ・ベイカーが使うようになり、人気が出たのではないかと考えている。
「弱腰で何かから逃げようとしている男性に向かって、使ったのだと思う。ちょっとした決め台詞になり(中略)何かとこの表現を使うたびに観客は大笑いした」のだという。
「かつては人気の決め台詞でも、今のコメディ・ドラマでは使わないものは色々ある。女の子のなにそれと言えばそれが相手への侮辱を意味するというのは、性差別だと思う。たとえば『女の子みたいにけんかする』とか、『女の子みたいに走る』とかの表現がそうだ」
イギリスの女性平等党に所属するハナ・バラム=ブラウン博士は、ジョンソン首相の発言は「ブレグジット論争の間、私たちが一環して徹底的に無視されてきたことを象徴するものだ」と批判した。
バラム=ブラウン博士は、政治団体「国民投票を求める女性たち」による調査結果を示し、ブレグジットに関する議会討論において発言時間の9割は男性が占めていると指摘した。
「首相は『大きい女の子のブラウス』という表現は、ただの面白い野次に過ぎないと思っているかもしれない。同じ意見の人もいるだろう。しかし私は、これはもっと悪質な、女性を徹底的に無視するという傾向の症状だと思う」
博士はツイッターで「#BigGirlsBlouse」というハッシュタグを立ち上げ、「大きい女の子のブラウス」を着ながら自分が何を達成したか、体験談の共有を促した。
「こういう発言はもっと指摘して批判する必要がある」と博士は呼びかけた。
1人のユーザーは「本日の#BigGirlsBlouse活動。ぼろぼろにならずに子供たちを無事に学校に送り届け、学校理事と慈善団体の理事としての役割を果たし、2つのお誕生会を計画し、不治のがんのせいで背中が痛むのを歯を食いしばってこらえながら、犬の散歩をした。どれも無給で」と書いた。
別の女性は、「今日は#BigGirlsBlouseを着ながら、自分1人で立ち上げて経営する会社のため、予約や問い合わせに対応して、マーケティング機会を調べた」とツイートした。
さらに別の女性は、「私は#biggirlsblouseを着た大きい女子で、重要文献をアクセスしやすい形式に置き換えている(今は音声ファイルに。たぶんすぐに点字に)」と書いた。
(英語記事 Big girl's blouse: Johnson faces backlash over Corbyn jibe)