太った人を馬鹿にすると体重は減るのか 「ファット・シェイミング」に批判集中

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アメリカの有名コメディアンで司会者のビル・マー氏が、太った人の体型や体重をからかう「ファット・シェイミング」を支持し、議論になっている。これに対し、イギリス出身のコメディ俳優で司会者のジェイムス・コーデン氏が、「ファット・シェイミングはいじめだ」と反論。インターネットで大きな支持を集めた。

マー氏は13日に放送された米HBOのトーク番組「リアル・タイム・ウィズ・ビル・マー」で、アメリカの肥満問題に言及。肥満は生まれつきではなく、不健康で恥ずかしいことだと述べ、今こそ「ファット・シェイミングが戻ってくるときだ」と話した。

これを受けてコーデン氏は、米CBSの自分の番組「レイト・レイト・ショー」でこの話題に触れ、「ビル、ありがとう!」と、まず観客を笑わせてから、「誰かが反論しないと、公に発言する場所を持っていて、太っているのがどういうことか知っている誰かが、何か言わないと……ああ、それは自分か」と続けた。これに、スタジオの観客は大きな拍手を送った。

「太っている人間は、毎日いつでも自分が太っていることを自覚させられている」、「太った人間は怠け者だっていう、間違った思い込みがあるけど、僕たちは分かってるんです。太っているのは、自分にとって良くないことだって。僕もこれまでの人生でずっと、自分の体重をなんとかコントロールしようとしてきたし、それがものすごくへたくそなんです。うまく行く日もあれば、うまくいかない月もある」とコーデン氏は話した。

さらに、「覚えている限り常に、なんだかんだとダイエットを続けてきたけど……これがその成果です」と自分の体を示すと、また客席は歓声を送った。

「全員がビル・マーほど幸運じゃないんだ。全員が、1日3万5000カロリーも燃やすほどの優越感をもってるわけじゃない」とマー氏を皮肉ってから、「本心で思うけど、(マー氏は)厳しい愛情を差し出してるつもりになっているんだと思う。太った人に対して現実を砂糖がけしてごまかしたりしないことで、人助けをしてるつもりなんだと。太った人間がどれほど砂糖がけのものが大好きか、知ってるくせに」など、自分を含め太っている人を自嘲的に語りつつ、批判を重ねた。

「ファット・シェイミングでどうなるかというと、ただひとつだと証明されてる。相手に恥ずかしい思いをさせるだけだ。恥ずかしさはゆううつや不安、自傷行為を誘発する。自傷行為というと、たとえば過食とか」

「(ビル・マーの)あのクリップを観たあと、僕は冷凍庫を開けてアイスクリームのカートンをつかんでしまった。冗談だよ。観始めたときはすでにカートンを半分まで食べてた。でももしかすると、ビルのせいで最後まで食べきっちゃたかもしれない」

「ファット・シェイミングはただのいじめだ」と続けると、これもまた大歓声を浴びた。

「こういうことで、肥満の蔓延は解消しないと思う(中略)太った人を馬鹿にしてそれで体重が減るなら、学校には肥満児がいないはずだ」とも続け、最後に「(肥満は)自分が一生闘っていかなくてはならない問題だ」と認めた。

その上で、マー氏に向けて、「ほかの人に、自分の口に何を入れるかもっと考えるよう呼びかけるなら、自分の口から何が出てくるか、もうちょっとちゃんと考えてもらいたい」と促した。

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しかし、マー氏の意見は的を射ているのだろうか?

イギリスの国民保健制度(NHS)によると、2017年にはイングランドの成人の3分の2が太りすぎだった。NHSの2017/2018年度の統計では、肥満が主要因とされる入院が1万660件あった。

アメリカでは状況はさらに深刻だ。国立健康統計センターによると、20歳以上の成人の70%が太りすぎか肥満と診断されているという。

英サリー大学のジェイン・オグデン教授(健康心理学)は、BBCの「ヴィクトリア・ダービシャー・プログラム」で、「誰かを恥ずかしがらせるのは、間違った方法だ」と指摘した。

「あらゆる証拠が、ファット・シェイミングは人の感情を害するだけだと示している。自尊心が低くなり、不安感やゆううつを感じ、その結果として自傷行為に走る可能性がある」

ユニヴァーシティー・コレッジ・ロンドンの行動学研究チームによる調査では、ファット・シェイミングは減量を促進せず、むしろ体重増加につながるという結果が出ている。

「太って幸せになることが許されなかった」

ヴィクトリア・エイブラハムさん(19)はフロリダ出身で、現在はニューヨークで学生をしている。

エイブラハムさんは自分自身の経験から、マー氏の主張が間違っていることが分かると話した。

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「私は人生でずっと体重についてからかわれてきて、今も太っている。子どもの頃は、学校でひどいことを言われると家に帰り、気分を良くするために何か食べていた」と語った。

「みんな、善意からこういうコメントをしている訳ではない。私を小心にさせ、自分の体についてネガティヴになるように仕向けていた」

「私の健康に気を使ってくれたのは両親と医者だけ。彼らにだけは、私の体について私に話す権利があった。街ですれ違う子どもたちは、ただ私が周りと違うからからかっていただけ」

エイブラハムさんは現在、自分の体型に自信を持っていると話す。もし小さいころの自分が今の自分を見たら、幼少時代はもっと幸せだっただろうと語った。

「あの頃は、太って幸せになることが許されなかった。どんな見た目であっても自分を愛するということが許されなかった」

変化のきっかけは、目にするメディアを変えたことだとエイブラハムさんは説明する。

「高校を卒業した後、太ったキャラクターのいる本を読んだり、太った女性が出ているテレビ番組を見るようになり、それで自分自身の見方が変わり始めた。細い白人女性ばかりのメディアしか見なかったら、自分に問題があると考えてしまう。でも太った美しい女性を見れば、自分の中の美しさにも気づくようになる」

エイブラハムさんは一方で、肥満による健康への影響についても理解していると話した。

「減量は健康に良いけれど、私はダイエット反対派。ほとんどのダイエットを試したけれど、その後にリバウンドするだけだった。今はもっと運動をして、健康的な食生活になるようにしている」

オグデン教授はBBCの取材で、「肥満について話し合うのはとても難しい」と語った。

「太りすぎや肥満が及ぼす影響、がんや糖尿病、心臓疾患についての証拠は非常に明白で、そういった教育こそ発信されるべきだ」

「しかし、そういったメッセージを発信することと、実際に誰かにその人自身のあり方を恥ずかしいと思わせてしまうことの境界はとても近く、対話は非常に難しい」

減量してもなお悪影響が

それに、たとえ減量したとしても、ファット・シェイミングの他の形で健康に影響を与えることもあるという。

現在ロサンゼルスに住むウィル・メイヴィティーさん(25)は、ジョージア州アトランタで生まれ育ったときには「とてもふくよか」だったと話す。

現在のメイヴィティーさんは、「とてもふくよか」とは程遠い。

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「肥満をからかわれ、それは加速していった。高校に入ったとき、(ファット・シェイミングを)避けるには、2度と太らないしかないと決めた」とメイヴィティーさんは語った。

しかしその後、メイヴィティーさんは摂食障害になってしまったという。

「ファット・シェイミングが減量のきっかけだったが、健康的な方法ではなかった。毎食後、吐くようになった」

「運動のしすぎで何度も何度もけがをしている。そうしないといけない気になって、運動できないと、腹が立ってしまう。運動できないなんてという怒りが、消えてくれないんだ。ファット・シェイミングによって、自分の価値は見た目にで決まると考えるようになった」

オグデン教授は、「何かについて誰かを馬鹿にしたところで、自分のためにはならない。馬鹿にする対象が何であっても」と強調する。

「社会を回す上で、ポジティブな方法ではない」

(英語 Does fat shaming help people lose weight?

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