「将来に希望はない」、香港の若者が直面する3大経済問題

カリシュマ・ヴァスワニ、BBCアジアビジネス担当編集委員

Left: Leung Suet Lam, 18 years old. Nickname “Bu”; Right Cheung Ka Ho, 20 years old. Nickname “Dicky”
Image caption リョン・シュ・ラムさん(左)とディッキー・チャンさんは、自分たちの将来の見通しは暗いと話す

香港の若者は就職難や低賃金、不動産価格の急騰など、様々な問題に直面している。こうした将来への不安が、香港の政治危機に拍車をかけているのだろうか。

「私は、より良い生活を得るために大学に進学したのに、自分の将来には希望がありません」と、ディッキー・チュンさんは話してくれた。

ディッキーさんと友人たちは皆、学生だ。しかし、彼らの友情や屈託のない笑顔の裏には、将来への不安が潜んでいる。

私は学生たちと香港の旺角(モンコック)地区で会った。夕食を食べながら、不満やむなしさについて話してくれた。

ディッキーさんは教師を目指して勉強している。家族のために大黒柱になりたいというが、それは不可能だと考えているという。

大学を卒業しても、良い仕事に就くことはなさそうだと、もしかしたら就職そのものが無理かもしれないと、ディッキーさんは言う。

「私は家族の生活を変えたい。香港では、家族は高い家賃を払うため、すごく働かなくてはなりません」。そう話すディッキーさんの目から、感情があふれ出していた。

「でも自分が大人になっても、それは無理です。求人率は下がっているし、私たちが3年後に卒業する頃には、状況はもっと悪化しているでしょう」

リョン・シュ・ラムさん(18)が描く将来も、ディッキーさんとほとんど同じだ。

「卒業しても、家族と暮らすことになると思います。マンションで1人暮らしをするのは大変で(中略)自分で買うのは現実的な選択肢ではないので」

Image caption 香港の若者は経済的に3つの問題に直面している

「それに香港の住宅は、非常に狭い造りになっています。小さいマンションの購入に大金を使って、それで自分の人生の可能性を狭めてしまうのでしょう」

ディッキーさんやリョンさんのような若者は、3つの大きな経済問題に直面している。賃金は増えない。就職はますます競争が激しくなっている。そして、不動産価格は急騰している。

香港で政治抗議が続く理由は複雑で、住宅購入や就職の問題は直接関係していない。それでも多くの若者は、何十年も続く香港政府の無計画な行政で、自分たちは無視されていると感じている。

若者たちは、社会の仕組みが自分たちを阻害していると感じている。それだけに、社会への怒りに拍車がかかった。

緩やかな賃金上昇

香港の一流大学に入るための競争はすさまじく激しい。しかし、たとえ一流大学に合格して卒業したとしても、良い仕事や安定収入が保証されているわけではない。

それに加えて香港の学生は、就職機会を中国の学生とも争うようになっている。

香港理工大学講師のチャン・ワイ・クンさんは、1990年代の大学卒の初任給は約2万5000香港ドルだったが、今日では2万8000香港ドル(約39万円)程度に過ぎないのではないかと指摘する。

ワイ・クンさんは、過去30年間の香港の若者の賃金上昇と生活費に関する報告書を公表した。

Image caption 香港理工大学講師のチャン・ワイ・クンさんは、教育を現代化する必要があると指摘する

ワイ・クンさんは、初任給の金額が停滞する一方で、不動産価格は十倍に膨れ上がっていたことを発見した。

「私たちの教育プログラムは時代遅れだ。私たちの経済は、不動産市場で富を築いたごく一部の財閥が独占している。こうした一族は、ハイテク産業や革新的なアイディアへの投資を惜しむ傾向がある。香港政府は、ハイテク開発に口先では賛同しているが、何も実行していない。若者がこの新たな産業に参加したいと思っても、良い機会があまりない」

手の届かない住宅

就職の可能性がこれほど厳しければ、マイホーム購入など、ほとんどの香港人にとって手の届かない夢だ。カリディ・チョウさんなど、ごくわずかな幸運な人たちを除いて。

香港にある海外企業の技術者として働くカリディさんは、きょうだいと一緒にマンションを購入するため、母親から資金を借りた。

「香港で住宅を所有するのはかなり難しいです。マンション価格は過去数年間、上昇し続けているので。値上がりはこれからも続くので、今年購入することに決めました」

Image caption 公営住宅団地が香港の住宅事情を改善するはずだったが

25平方メートルの狭いマンション購入に、50万香港ドル(約690万円)以上もかかった。

カリディさんと恋人、そしてカリディさんのきょうだいが一緒に生活する予定だ。不動産が高騰する香港では珍しいことではないと、カリディさんは言う。

スイス金融大手UBSの「グローバル不動産バブル指数」によると、香港は世界で最も住宅価格が高い都市のひとつだ。

2008年以降、住宅価格は2倍に膨れ上がっている。香港統計局によると、2017年には住宅を所有する世帯は半数以下に留まった。これは、過去20年間で最も低い割合だ。

解決策として公営住宅団地が用意されたものの、事態を改善するには数が足りていない。

その原因のひとつは、未使用の土地などを手放さない不動産開発業者が公営住宅の建設に乗り気ではないことが挙げられる。

Image caption 香港当局の土地供給タスクフォース責任者だったスタンリー・ウォンさんは、土地供給に問題があると指摘する

「不動産開発業者が個人の住宅のために(土地の)開発を行えば、10倍ほどの値段で売ることができます」。香港当局の土地供給タスクフォース責任者だったスタンリー・ウォンさんは、私にそう話してくれた。

「公営賃貸住宅の場合、利益は5倍ほど低下するでしょう。どんな国家でも土地供給は政府の責任です。過去10年あるいは15年の間、中期的に市民への土地供給が確実に満たされるよう、香港政府が大胆に動いたことはまったくなかった」

政治的意思の欠如

世界的に税率が最も低い都市のひとつなのを強みに、香港は国際金融の中心地となった。

しかし税率が低いからこそ、香港政府は別の方法で、教育や住宅、医療制度などの予算を調達しなければならなかった。

政府はこれまで、商業プロジェクトの開発者に土地を販売し、その収入に頼ってきた。ということは政府にとって、公営住宅のために土地を開放するメリットがほとんどない。

ほかにも、立法会の複雑な構成も問題になっている。公的資金の使い方を決めるのは立法会だが、その議席の大部分は自分たちの業界利益を優先する経済団体に独占されている。

香港は、ビジネスのために作られた商都だ。そこで、ビジネスは栄えたものの、それ以外は取り残されてしまった。

政府の計画性の欠如が、45年間で最悪の経済格差を香港にもたらした。

政府はいま、事態改善の必要を認識している。しかし、それには対応が不十分で、時すでに遅しなのかもしれない。

(英語記事 ‘I don’t have any hope for my future in Hong Kong’

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