【解説】 英下院で何があった 総選挙を否決、EU離脱とどう関係?

A European Union flag flies outside the Houses of Parliament in London, 23 October 2019 Image copyright Getty Images

イギリスの欧州連合(EU)離脱をめぐり紛糾している英下院(定数650)は28日夜、ボリス・ジョンソン首相が提出した12月12日に解散総選挙を行う動議を否決した。首相の解散動議が否決されるのはこれで3度目。

ジョンソン首相はこの採決の前に、ブレグジット(イギリスのEU離脱)期限を2020年1月31日に延期するというEUからの提案を受け入れた。その上で、議会で離脱協定案の承認を取り付けるには解散総選挙が不可欠だとしている。

しかし3度の否決にも関わらず、クリスマス前に総選挙が行われる可能性はまだ残されている。一体何が起こっているのか。

<関連記事>

ジョンソン首相はどうやって(また)負けたのか

いささか皮肉なことに、与党の保守党は単独で解散総選挙の実施を決められない。

法的には、ジョンソン首相は下院の3分の2にあたる434票を集めなければならない。今の保守党は少数与党のため、野党からも支持を得る必要がある。

最大野党・労働党のジェレミー・コービン党首は、離脱条件についてEUと合意しないまま離脱する「合意なし離脱」の可能性が完全に排除されない限り、政府の解散総選挙案を支持しないとしていた。

また、離脱協定案を法制化するための離脱協定法案について、ブレグジット後に労働者の権利が損なわれる内容が含まれていると指摘する声もあった。さらに、総選挙の実施を承認した後にジョンソン首相が投票日をブレグジット後に変更し、協定法案の承認を強行するのではないかとの懸念も出ていた。

28日の採決では、大半の労働党議員が棄権した。その結果、動議は299対70で賛成多数となったものの、可決に必要な434票の支持は集められなかった。

次はどうなる

信じられないかもしれないが、12月12日に総選挙を行うための採決が、再び行われる。

そう、ジョンソン首相はまだ、クリスマス前の総選挙を諦めていないのだ。

ジョンソン氏は29日にも、下院に12月12日の解散総選挙法案を提出する。こちらは単純過半数を可決となるものだ。

過半数獲得に向け、首相は野党・自由民主党とスコットランド国民党(SNP)の支持を取り付けようとしている。

両党はすでに12月9日の総選挙法案を提出しているが、首相の法案はこれと「ほぼ同じ」内容の短い法案になるという。

しかし、首相の法案には修正案が加えられる可能性もあり、先行きは不透明だ。

総選挙でブレグジット問題は解決?

そうとは限らない。

下院は19日の緊急審議で、離脱に関する法整備を終えるまでは離脱協定案を採決しないという議員案を可決した。

その後、政府が提出した協定法案を可決したものの、法案の早期成立を目指すための3日間という短期の審議日程案は否決したため、審議は「宙ぶらりん」の状態となっている。

総選挙で保守党が過半数議席を獲得し、ジョンソン首相が議会でより大きな力を得る可能性もあるが、総選挙自体が首相の、ひいては保守党のリスクになることも考えられる。

ジョンソン首相はかねて、EUとの合意のあるなしに関わらず10月31日に離脱を決行すると公約し、それができなければ「溝で野たれ死んだ方がまし」と発言していた。

しかし、イギリス議会が合意なし離脱を回避するための通称「ベン法」を可決したことで、ジョンソン首相はEUに離脱期限の延長要請を余儀なくされ、それを受け入れた。

その結果として、有権者が公約を破った首相に対し、投票を通じて罰を与える可能性もある。

2度目の国民投票はあり得る?

EU離脱の是非についてもう一度、国民に問い直すという案は、ブレグジットの膠着(こうちゃく)状態を打破する可能性として示唆されてきた。

しかし、ユニヴァーシティ・コレッジ・ロンドンの憲法研究チームによると、国民投票の実施には最短で22週間が必要だ。国民投票法案の可決に12週、投票に向けたキャンペーンと投票そのものの運営にさらに10週かかるという。

そして繰り返しになるが、政府は単独で国民投票の実施を決めることはできない。国民投票を行うには、下院と上院でそれぞれ過半数の賛成が必要だ。

ブレグジット延期の手続きは?

欧州理事会のドナルド・トゥスク常任議長(大統領に相当)は、今回の延期は「フレクステンション(柔軟な延期)」だと説明している。フレクステンションでは、イギリス議会が離脱期日までに離脱協定を承認すれば、その時点で離脱が可能となる。

イギリス側が2020年1月31日という新たな期限を受け入れたため、今後はEU加盟27カ国が書面で承認手続きを行うことになっている。

EU高官によると、この手続きは30日までには終わる見込みだ。

合意なし離脱の可能性は?

まだある。

ジョンソン首相は延期離脱を承諾したが、これで合意なし離脱の可能性が排除されたわけではない。むしろ、可能性が先延ばしされたことになる。

首相は離脱協定案の承認に向けて動いているものの、もし離脱期限までにこれが達成されなければ、イギリスは合意のないままEUから離脱することになる。

(英語記事 UK election vote: What just happened?

この話題についてさらに読む