【ラグビーW杯】 泥こそすべて 日本で生まれた新たなラグビー

レベッカ・シールズ、BBCニュース(東京)

Players slosh through a game of tambo rugby in Kyoto, western Japan Image copyright Newscom/Alamy Live News
Image caption 京都で行われた田んぼラグビーの試合で、選手はバシャバシャと泥まみれになりながらプレーした

日本で誕生したばかりのあるスポーツが、あらゆる人を魅了している。子供たちはキャッキャと声を上げ、プロのラグビー選手も夢中で楽しむ。汚れずにプレーすることが不可能なスポーツとは――。

それは「田んぼラグビー」だ。選手は田んぼの中をバシャバシャと走りまわる。水泳ゴーグルがラグビーのスカルキャップ代わりだ。

ノンコンタクトスポーツの田んぼラグビーにタックルはない。あらゆる年齢の男女が、苗を植える前の水田で対戦する。

1トライで2点獲得できる。巨大な水溜りに体ごと飛び込む楽しさも、もれなく付いてくる。

11月2日に閉幕するラグビーワールドカップのおかげで、日本では今年、ラグビー熱が最高潮に達した。一方、田んぼラグビーは2015年の誕生以来、着実にファンを増やしている。

地域活性化

田んぼラグビーは2015年、京都府福知山市で誕生した。台風の影響で水害を受けた地域を、住民らがラグビーで活性化しようとしたのが始まりだったという。

次第に、福知山市から約80キロ東にある福井県小浜市へと広がった。そして、遠く離れた茨城県龍ヶ崎市に。同市の女性農家がソーシャルメディアで泥風呂状態の田んぼラグビーを知り、面白そうだと感じたのがきっかけだった。

共同通信によると、今年国内では、7月のシーズン開幕以降、15試合ほど行われたという。悪くない数字だ。田んぼラグビーの試合ができるのは、5月から8月ごろに限定されるからだ。

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Image caption 田んぼラグビーをする人の数は今年、50%増加したという

田んぼが悪天候による浸水被害を受けていない今も、農家がなぜ水を張って田んぼラグビーの準備をしているのか、疑問に思うかもしれない。その答えはどうやら、稲は湛水土壌でよく育つことにあるようだ。そのため、あえて水を張って田んぼを管理することが多いという。

トップリーグ所属選手も参加

ジャパンラグビー・トップリーグ所属の選手も、田んぼラグビーにはまっている。同トップリーグに所属しているのはすべて企業チームで、農機メーカーのクボタの「クボタスピアーズ」もその1つ。

クボタは、陽気な交流会のために一流選手を地方へ送り込むことで、ブランドイメージにつながるかもしれないと考えたのかもしれない。選手が田んぼラグビーの試合をどれだけ好きになるかは想定していなかっただろう。

全国有数の米どころの千葉県に本拠地を構えるクボタスピアーズのロック、新関世志輝選手は、これまでにトーナメントに4度出場した。田んぼラグビー発祥の地の福知山市でもプレーしたことがある。新関選手のチームは、出場試合の約半分で勝利を収めたという。

「誰もが、田んぼに足を突っ込んで、びしょびしょになりながら大騒ぎする感覚を1度は経験すべきだと思います」と、新関選手は言う。

「大人は重くて体が沈みやすいので、体重の軽い子供たちには大きなアドバンテージがあります。子供が大人チームに勝って番狂わせが起きると、会場は大盛り上がりです」

「それに大人にとっては、青春時代に戻って子供たちと駆け回ることができる、完璧なスポーツなんです。田んぼラグビーは私にとって本当に特別な経験となりました。楽しくて面白いスポーツとしてだけでなく、子供たちに混ざったり、地元の人と交流したり、その地域の文化を学んだりする機会を与えてくれたので」

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Image caption クボタスピアーズの新関世志輝選手(右)は、岡山で子供たちと一緒に田んぼラグビーを楽しんだ

クボタスピアーズのスタンドオフ・センター・フルバック、白井竜馬選手も、新関選手の考えに賛成だ。白井選手は京都や徳島県、千葉県で7度、トーナメントに出場した田んぼラグビーのベテランだが、たった1度しか勝ったことがないという。

「田んぼでのラグビーは、若さや年齢、男性や女性といったことは関係なく楽しめます。トーナメントへの参加チームの数は毎年増えています。トーナメントがもっと大規模になるのをすごく楽しみにしています」

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Image caption クボタスピアーズの白井竜馬選手は、千葉県での試合で泥を跳ね飛ばしながらトライを決めた

地域をひとつにまとめる

東京を拠点に活動する東京外人ラグビーフットボールクラブは、十数チームが参加する、5月の福知山市でのトーナメントに向けて、ラグビーツアーを計画した。

同クラブでプレーするデイヴィッド・マケルヒニーさんにとっては、「本州を、高速道路を使わず12時間くらい時間をかけて移動する」価値はあったようだ。

「田んぼタグビーは楽しいけど、驚くほど激しいスポーツです。水中での抵抗があるので、一つ一つの動作には余分に力が必要です。泥に足をとられることは言うまでもありません。通常のラグビーとはまた別の面白いラグビーです。雰囲気もすばらしかった。至るところで多くの人々を巻き込む様子を目の当たりにできてよかったし、幼い子供や男性や女性が参加できる素晴らしい方法だと思います」

東京外人は、京都郊外の豊かな自然が気に入り、福知山市でのトーナメントへの参加は、毎年恒例の聖地巡礼となった。主催者側にとて喜ばしいことに違いない。

田んぼラグビー発案者の長手信行さんは、「田んぼラグビーとは、田んぼでラグビーをプレーするということだけではありません。地域社会全体をひとつにまとめるということなのです」と話す。

(英語記事 All you need is mud: Japan’s new spin on rugby

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