トランプ氏の弾劾公聴会 大統領の地盤での受け止めは…

タラ・マケルヴィー、BBCニュース(米ペンシルヴェニア州で)

Lynne Gramling, a businesswoman, does not trust the Democrats who are leading the impeachment inquiry
Image caption 女性実業家のリン・グラムリンさんは、トランプ大統領の弾劾調査を進める民主党を信用していない

ドナルド・トランプ米大統領の弾劾調査で、公聴会が始まった。首都ワシントンではその話題で持ち切りとなったが、トランプ支持者が多い地域の様子はどうだったかというと……。

来年の大統領選で接線が予想されるペンシルヴェニア州。同州西部の多くの住民は、民主党が進めている弾劾調査に懐疑的だった。

住民たちはトランプ氏を熱心に擁護した。この住民たちのトランプ氏と政府に対する評価が、再び大統領選で鍵を握るかもしれない。

リン・グラムリンさんは13日の公聴会を、自宅居間のテレビで見た。下院情報委員会のアダム・シフ委員長が発言すると、グラムリンさんは顔をしかめ、「シフティ・シフ」(ずるいシフ)とつぶやいた。トランプ氏がシフ氏に対して使うあだ名だ。

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シフ氏ら民主党議員は、ウクライナ疑惑にからんでトランプ氏が権力を乱用したと立証し、大統領の座から追い出そうとしている。

民主党が弾劾を実現させるには、グラムリンさんのような人たちの支援が必要だ。弾劾に成功できなければ、来年の大統領選でトランプ氏の退場を狙う。

だが、民主党議員らはグラムリンさんの心をつかむことはできなかった。この地域で話を聞いた十数人を超える人々と同様、グラムリンさんはトランプ氏と彼の仕事ぶりを称賛し、シフ氏に不信感を示した。

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大統領選を左右する重要州

ペンシルヴェニア州は、来年の大統領選で結果を左右する州の1つだ。前回の大統領選でトランプ氏は、全国の総得票数で負けた。しかし、選挙人の獲得人数で上回ったため勝利した。そのとき大きかったのが、ペンシルヴェニアやミシガンなど、選挙人数の多い州での勝利だった。

トランプ氏が再選を果たすには、ペンシルヴェニア州などでの勝利が欠かせないと、米紙ニューヨーク・タイムズは指摘している。

ペンシルヴェニア州は、どちらも転び得る。西部の有権者には、トランプ氏に投票する人が多い。だが、郊外の住民には反トランプ派が多い。約15%とされる浮動層の行方によっても結果は変わる。

選挙運動員たちは、グラムリンさんのような同州西部の住民が、弾劾調査にどう反応するかを注視している。国内有数の激戦州で有権者がどう考え、事態がどう動くかを読む手がかりになるからだ。

グラムリンさんの地元ジョンズタウンはかつて、ハンガリー、ポーランド、チェコスロヴァキアといった国からの移民労働者にとって楽園のように暮らしやすい場所だった。しかし、ほかの炭鉱や鉄鋼の町と同様、仕事はなくなった。失業率は国平均の2倍に近いと、市関係者は言う。

地元の百貨店は何年も前に閉店した。所有していたのは、ホワイトハウスのスティーヴン・ミラー上級顧問の家族だ。彼は子ども時代、夏休みをジョンズタウンで過ごしていた。

Image caption ジョンズタウンの地元紙トリビューン・デモクラットは、公聴会について「外交官がトランプ氏を非難」と報じた

ミラー氏が2016年、トランプ氏を伴い、この街に戻った。「あなたたちは今後一生、この日を思い出すことになるだろう」と、トランプ氏は集会で言った。「みんなずっと待っていた変化がついにやってくる」。

大きな変化は生まれていないが、グラムリンさんは希望を抱いている。

彼女自身、トランプ政権になって経済的には上向きだ。建設資材会社を売却して高級住宅に引っ越し、「フレンチ・サロン」風のデザイン家具を購入した。内装にもお金をかけた。

この街でトランプ氏が支持される理由が、グラムリンさんの熱意からも見て取れる。ここでは、トランプ氏が、粗暴で厚かましく「洗練」されていないからこそ、住民に好かれているのだ。

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「ばかげた発言を相手にしないところが好き」と、グラムリンさんは言う。

かつては民主党の地盤

同じくらい強い気持ちで、グラムリンさんはシフ氏を嫌う。テレビで公聴会を見ながら、シフ氏は「自分の政策的なねらいに合う」よう証人に圧力をかけていると話す。

シフ氏へのグラムリンさんの不信感は、この地域の保守傾向を反映するものだ。公聴会はトランプ氏への攻撃で、「前回選挙のやり直しを目指している」というのが、ここの住民の受け止め方だとピッツバーグ大のレイ・ラブリー教授(政治科学)は話す。

かつては、この地域の住民は民主党を支持していた。2008年大統領選ではバラク・オバマ氏が勝った。しかし、何年も放置された結果、共和党支持へと転じた。2016年大統領選では、トランプ氏が大差で勝利した。

Image caption ジョンズタウンはかつて、ハンガリーやポーランド、チェコなどからの移民労働者で栄えたが、すっかりさびれた

それでも、トランプ氏に反対の住民もいる。同州の選挙結果は数千票で変わるので、一部住民の失望は影響力をもつ。

電気設備店で働く、がっしりした体型のデイヴィッド・ジョンストンさんは、民主党が証人を呼んでいるため、公聴会はフェアではなく、「ねじ曲がっている」と言う。「そもそも実質的ではなく政治的だ」。

ジョンストンさんの父親は製鋼所で働き、民主党員だった。一方、ジョンストンさんはトランプ支持者で、民主党は無節操だと感じている。「初日から、民主党の支配層は大統領を破滅させようとしている」。

ただ、民主党の努力を評価する人もいる。共和党員のタミー・フィフィックさんは、前回大統領選でトランプ氏に投票したが、今では後悔している。ユダヤ教の礼拝堂で働くフィフィックさんは、弁護士事務所で会計職員としても働いている。公聴会については、仕事から仕事への移動中に耳にした。

トランプ氏については職権を乱用したと感じていたが、公聴会ではそれが確認できたという。「(公聴会は)何かを探していた。それは当然だ。今回のこれなら、トランプ氏にダメ出しできると思う」。

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とはいえ、この地域の多くの人はまだトランプ氏を応援している。公聴会は、そうした人たちの心を変えてはいない。

公聴会が終わりかけたころ、グラムリンさんの家を辞去した。出がけに、「最終的には何かが見つかって、あなたも『弾劾しろ』と言うかもしれない」と声をかけた。

するとグラムリンさんは頭を振り、「それはない」と大きな声で言った。「絶対にそんなこと起こらない」と言い、ドアを閉めた。

グラムリンさんがトランプ大統領に抱いている忠誠心は深く、それはトランプ氏に再選をもたらすかもしれない。公聴会がどうなろうと。

(英語記事 Watching impeachment hearing in Trump country

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