韓国元アイドルの死で怒り噴出 「私はあなたのポルノじゃない」

Former member of South Korean girl group KARA Image copyright Getty Images
Image caption ク・ハラさんの死は、韓国の「隠し撮り」問題にスポットライトを当てた

韓国のアイドルグループ「KARA」の元メンバーのク・ハラさんが24日、死亡した。自殺とみられる。彼女の死をきっかけに、韓国では若者の間である要求が強まっている。

性犯罪、とりわけ「隠し撮り」の厳罰化だ。

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Kポップ界のスターだったクさんの最後の1年は、ステージ外での出来事が大きく影を落とした。

昨年9月、クさんは元恋人チェ・ジョンボムさんを相手に民事訴訟を起こした。元恋人から、「性行為の動画を公表し、キャリアを傷つける」と脅されたと主張した。

裁判所は今年8月、チェさんを暴行や脅迫、器物損壊などの罪で有罪とした。1年6カ月の刑を言い渡したが、執行を猶予した。

性行為の撮影については、クさんは同意していなかったと認定。しかし、撮影後も恋愛関係にあったことから、隠し撮りについては無罪とした。

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Image caption クさん(右端)はKARAのメンバーとして活躍。大きな人気を得た

クさんのファンは、この判決がクさんを落胆させたと訴えている。

「私たちはもうハラを救えないが、彼女とすべての虐待された女性に正義をもたらす一助にはなれる」として、「チェを処罰」というハッシュタグを使うよう呼びかける投稿がツイッターに上がった。

別の人は、「彼女(クさん)が人生でこれほどの苦しみに見舞われたのがあまりに悲しく、怒りを覚える。彼が刑務所に入っていないこと自体が犯罪だ」とツイートした。

加害者の多くは罰金刑

スパイカメラによる盗撮が韓国で社会問題化したのは、なにも最近ではない。

スパイカメラに関する警察への届け出は、過去2年間で1万1200件を突破。この問題に取り組む団体は、被害に遭っても恐怖心から届け出ていない人はかなりの人数に上るとしている。

有罪とされた加害者のほとんどは、罰金刑で済んでいる。

「スパイカメラは道路、地下鉄、公園など、社会のあらゆる場所に広まっていることに衝撃を受けた」と韓国の弁護士アン・ソヨン氏はBBCに語った。

「違法撮影の刑罰が軽すぎる。あまりに事件数が多いからだ。あまりに多いから、裁判所は真剣に扱わない。男性が被害を経験しないのも、裁判所が真剣にならない理由だ」

盗撮の被害者は圧倒的に女性だが、韓国の裁判官は圧倒的に男性が多い。

被害者が命を落とす社会

知っている人に盗撮される精神的ダメージは大きい。

「スパイカメラを使った犯罪は、性暴力の一形態であり、個人情報とプライバシーの深刻な侵害だ」と、韓国自殺予防センターの管理者は話す。

「被害者が死傷者になってしまう社会であってはならない」

韓国女性政策研究院は、違法撮影などの性犯罪の被害者2000人以上に聞き取り調査をした。その結果、被害者の23%が自殺を考えたことがあり、16%は自殺を計画したことがわかった。実際に自殺を試みた人も23人いたという。

韓国自殺予防センターは、「犯罪者に適切な重さの刑罰を科すのは、命を尊重する健康な社会の基礎だ」と述べた。

Image caption 何千人もの女性が、知らない間に撮影されたと届け出た

韓国の法務部(法務省に相当)はBBCに、クさんの事件を受けて関連の法律を調整したと説明。検察に対し、深刻な事案では最も重い刑を求刑するよう求めたとした。

一方で、刑罰は裁判所が決めることであり、法務部が関わることではないと述べた。

同国の最高裁はコメント取材に応じなかった。

出るくいは

盗撮の加害者を罪に問うことで、つらい思いをすることもある。

クさんは、裁判所で何度も証言しなくてはならなかった。身分も事件の性質も、隠すことは不可能だった。

裁判が開かれていた当時、「ク・ハラのセックス動画」はオンラインのトレンド上位に入っていた。

ファンはクさんを応援し続けたが、ソーシャルメディアでクさんは悪者にされた。

彼女の自殺については、いくつもの原因論が浮上している。多くは、「Kポップの暗部」と称される、アイドル産業の厳しい競争文化に関するものだ。

だが、問題はそこにとどまらない。

クさんは10月、親友でKポップスターのソルリさんを失った。自殺だった。

従来のスターと異なり、ソルリさんは歯に衣を着せないことで知られていた。典型的なジェンダーの型にはまらず、そのことでオンラインで嘲笑され、攻撃を受けた。

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Image caption 女性の社会的な処遇などについて率直な発言で知られたソルリさんは今年10月に自殺した

韓国社会はゆっくりと変化しつつあるが、保守的で男性優位のままだ。女性の虐待被害がまともに扱われない場合もある。

クさんのように社会的に目立つ人ですら、犯罪被害に遭った後にソーシャルメディアで嫌がらせを受けている状況は、どんなメッセージを発することになるのか。

韓国・中央大学の社会学者イ・ナヨンさんは、同国では性犯罪被害者は「らく印を押される」ことが多いと話す。

「いったん汚れたとレッテルを貼られると、残りの人生でずっと尻軽女だとされる。そんな重荷をどうかついで生きろというのか」

「社会的な気づきが大事」

ただ、社会が変わり始めている兆しはうかがえる。

若い女性を中心に、何万人もが昨年、路上でデモを行い、スパイカメラを使った犯罪を厳しく取り締まるよう要求。「私の人生はあなたのポルノじゃない」と声を張り上げた。

裁判で女性被害者が勝訴するケースも増えてきていると、アン弁護士は言う。

「韓国の若者は有能で、社会的な意識も急速に向上している。司法制度もそれに呼応している。変化は起きていると楽観している」

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Image caption ソウルの抗議集会では多くの女性が「私の人生はあなたのポルノじゃない」というメッセージを掲げた

アン氏はまた、最大の変革は韓国社会の内側から生まれる必要があると話す。

「司法制度の改善は二次的なものだ。最も重要な進歩は、社会的、文化的な気づきの中で生まれる必要がある」

警察庁では性犯罪被害の相談電話窓口として、全国共通番号「#8103」を導入しています。

内閣府男女共同参画局でも性暴力被害者に必要な情報を提供しています。

また現在、都道府県に「ワンストップ支援センター」が設置されています。

(英語記事 The K-pop star and the suffering of spy cam victims

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