マイクがオンだと知らず……歴史に残る政治家のうっかり発言

UK Prime Minister Gordon Brown

「常にマイクが入っていると思え」。これが政治における黄金律だ。

しかし、このルールはしばしば忘れられてしまう。世界中の多くの首脳がそう証言するだろう。

アメリカからオーストラリアまで、世界中の政治家がマイクやカメラが入っていることを知らずにうっかりと発言し、大恥をかいてきた。

今週には、北太平洋条約機構(NATO)の首脳会議の場で、カナダのジャスティン・トルドー首相がアメリカのドナルド・トランプ大統領を話題にして他の首脳たちと談笑する様子が、カメラに捕らえられてしまった。

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トルドー首相やアン王女、トランプ氏をサカナに歓談? NATO70周年

カメラやマイクの存在を気にかけない発言によって、政治家は恥をかくだけでなく、特には失脚する場合もある。

一方でこうした発言は、国際外交の分かりにくい駆け引きに、良くも悪くも光を当てることにもなる。

マイクが拾ってしまった、いくつかの印象深いうっかり発言を紹介する。

1. ロナルド・レーガン米大統領:「5分後に爆撃を開始する」(1984年)

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レーガン大統領はサウンドチェック中に冗談を飛ばすことで知られていた

冷戦真っただ中の1984年、ロナルド・レーガン米大統領のジョークがソヴィエト連邦との関係を悪化させた。

毎週行っていたラジオ演説のサウンドチェック中、レーガン大統領はスタッフ相手にこんな冗談を言った。

「アメリカ国民の皆さん、私はきょう、ロシアを永遠に非合法化する法案に署名しました。5分後に爆撃を開始します」

このジョークは放送されなかったものの、録音されており、後日公開されてしまった。

その結果、ソ連ではレーガン氏に対する抗議が巻き起こり、ソ連軍は一時、極東に警戒態勢を敷く事態となった。

2. ジャック・シラク仏大統領:「料理が下手な国の人は信用できない」(2005年)

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ジャック・シラク仏大統領は、フィンランドとイギリスの料理が嫌いだったようだ

フランスのジャック・シラク大統領は、ロシアを訪問中にこの発言をしたとされている。

仏紙リベラシオンによると、シラク氏はロシアの飛び地カリーニングラード市の750周年記念式典で、ロシアとドイツの首脳と話していた。

マイクが切れていると思ったシラク氏は、イギリスのことを指して、「あんなに料理が下手な国の人は信用できない。あの国はフィンランドの次に食事がまずい」と言ったとされる。

「イギリスが欧州の農業にもたらしたものといえば狂牛病だけだ」

公に放送されることはなかったものの、シラク氏の広報チームは一度もこの発言を否定しなかった。

当時イギリスとフランスの関係は、農業の補助金や、フランスのイラク戦争不関与などで冷え切っていた。

3. ジョージ・W・ブッシュ米大統領:「おい、ブレア!」(2006年)

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ジョージ・W・ブッシュ米大統領(左)とトニー・ブレア英首相

サンクトペテルブルクで行われた主要8カ国首脳会議(G8サミット)で、ジョージ・W・ブッシュ米大統領はトニー・ブレア英首相とざっくばらんな会話をした。

「Yo, Blair!(おい、ブレア!)」として知られるこの会話はまず、ブッシュ氏がブレア氏に「おい、ブレア! 元気か?」と話しかけ、ジャケットの贈り物に感謝した後、レバノンの武装勢力ヒズボラについて侮蔑的な発言をした。

シリアがイスラエルとの摩擦の中でヒズボラを支援していることに触れたブッシュ氏は、「ヒズボラにこれ(ののしりの言葉)を止めさせるために、国連にシリアをどうにかさせるべきだ」と話した。

「コフィ(・アナン国連事務総長)にアサド(シリア大統領)に電話をかけさせて、ことを動かすべきだ」

ブッシュ氏の「おい、ブレア」という呼びかけは、ブッシュ、ブレア両氏のライバルによって揶揄された。一方で、ブッシュ氏は実は「Yeah, Blair(そうだ、ブレア)」と言っていたのではないかと指摘するジャーナリストもいる。

いずれにせよ、こっそりとマイクが拾っていたこの会話は、両氏の親密な、しかしたびたび物議をかもした関係をよく表している。

4. ゴードン・ブラウン英首相:「偏屈な女」(2010年)

労働党のゴードン・ブラウン首相はこの日、イングランド北部のロッチデールで市民と対話していたところ、ひとりの女性から移民の多さについて怒りをぶつけられた。

やり取りの後、ブラウン氏は車に戻ったものの、放送局スカイニュースのマイクを服に付けたままだった。

マイクが入っていることに気づかないまま、ブラウン氏は側近に「(女性との会話は)ひどかった。あの女としゃべらせないでほしかった」と語った。

女性に何を言われたのかと聞かれると、「何もかもだ! 前は労働党支持者だったと言う、ただの偏屈な女だ。まったく馬鹿げている」と答えた。

ブラウン氏は後に、この女性(ジリアン・ダッフィーさん)を訪問して謝罪したほか、BBCのラジオ番組の取材でも謝罪を繰り返した。

5. ニコラス・サルコジ仏大統領:「もう耐えられない」(2011年)

これは、2011年にフランスで行われた主要20カ国・地域首脳会議(G20 サミット)での、ニコラス・サルコジ仏大統領とバラク・オバマ米大統領の会話だ。

共同記者会見の直前、記者団に同時通訳の機器が手渡されたが、サルコジ、オバマ両氏が出てくるまではヘッドフォンを付けないよう指示された。

何人かの記者はこれを無視して、待機中の両氏の会話を聞いてしまった。

それによると、サルコジ氏はイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相について「もう耐えられない。彼は嘘つきだ」と話した。

これに対しオバマ氏は、「うんざりしてるでしょうが、私は彼と毎日やりとりをしなければならない」と答えている。

このやりとりは数日間、伏せられていたが、フランスのニュースサイト「Arret sur Images」のダン・イスラエル氏によって公になった。

イスラエルは当時、フランスともアメリカとも関係が悪化していた。