【解説】 感染拡大の誤解を招く地図、BBCが検証 新型ウイルス

BBCリアリティーチェック(ファクトチェック)

A government worker in Wuhan at the epicentre of the coronavirus outbreak in China, 16 February 2020 Image copyright EPA

専門家らが新型コロナウイルスを追跡し、流行を食い止めるのに奔走している一方、感染の広がりについて誤解を招く情報がインターネットで拡散している。

下の画像は10年以上前に作られた国際線航路を示した地図だが、これが世界中のニュースメディアで誤った使われ方をしている。

そうしたメディアでは、この地図に「コロナウイルスから安全な国はない、新しい地図で判明」、「武漢の旅行者がウイルスを世界400都市にまき散らす、恐ろしい地図が公開」といった見出しが付けられている。

Image caption イギリスのタブロイド紙サンが掲載したこの地図は、誤解を招く表現となっている。見出しには「安全な場所はどこにもない、恐ろしい感染マップが公開」とある

国際線航路の地図がなぜ?

英サザンプトン大学の世界人口プロジェクトは2月初め、新型コロナウイルスが発生した武漢の市民についての調査を発表。同市が閉鎖されるまでの2週間で、市民がどこへ移動したかを推測した。

この調査で研究チームは、武漢市民が1年前に行った空の便での移動と、携帯電話のデータ記録を使用した。

調査の結果、当局が渡航禁止措置を決定する前に、6万人の武漢市民が全世界400都市に移動していた可能性があることが判明した。

研究チームはツイッター上でこの調査について投稿を重ね、その中には赤い色で国際線の航路が描かれた地図もあった。

しかし、この地図が研究の一部でないことは説明しなかった。

何人かがこの地図に反応し、研究結果を示したものかとたずねた。これに対し研究チームは「ノー」と明確に答え、この地図は一連の投稿の一部に過ぎず、世界の航空網を示したものだと説明した。その後、研究チームはこのツイートを削除した。

しかし同大学の広報担当者は、「なぜか、この地図から、間違った情報が持ち上がってしまった」とBBCニュースに説明した。

Image caption 各国の新型コロナウイルス感染者数。左上から日本513人(クルーズ船の454人を含む)、シンガポール75人、タイ34人、韓国30人と続く。 出典:欧州疾病予防管理センター、厚生労働省(2月17日現在)

オーストラリアで拡散

この地図を最初に取り上げたのはオーストラリアのニュースメディアだった。その後、イギリスでもタブロイド紙サンやデイリー・メイル、メトロなどがオンライン版で掲載した。

オーストラリアの民放7Newsは、この地図を番組内のディスカッションで使用したほか、ソーシャルメディアにもこの地図を取り上げた動画を投稿。700万回以上再生された。

7Newsは番組で、この地図は新型コロナウイルスの世界的な拡散を推測したものだと説明し、赤い線は武漢市民500万人が街を逃れたルートを表していると述べた。

実際はこの赤い線は、世界の航空網を示したものにすぎない。

また、500万人というのはまったく別のところから出てきた数字だ。武漢市長は先に、春節(旧正月)を前に街を離れた市民の総数が500万人だと述べたが、その大半は中国国内にとどまっているとみられる。

これからどうなる?

7Newsはその後、この調査に関するオンライン記事からこの地図を削除した。

しかし今でもアラビア語やロシア語、ポーランド語、ヴェトナム語などのニュースメディアに、同じような記事が掲載されている。

また先週には、アメリカのラジオDJグレン・ベック氏の番組に出演した人が、この地図に言及。イギリスの専門家が中国から国外に渡航した6万人分の携帯電話を追跡して作ったものだと話した。

(英語記事 How a misleading coronavirus map went global

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