【米大統領選2020】 スーパー・チューズデー、民主党の勝者と敗者

アンソニー・ザーカー北米担当記者

Sanders, Warren, Biden and Bloomberg

米大統領選の候補者選びのヤマ場となる「スーパー・チューズデー」の投票が3日、14の州で行われた。投票結果が次々と明らかになり、4人による民主党の候補者争いはすぐに、ジョー・バイデン前副大統領と左派バーニー・サンダース上院議員との一騎打ちとなった。ドナルド・トランプ大統領への挑戦者を選ぶこの戦いで、最大の勝者と敗者は誰だったのだろうか。

勝った人たち

ジョー・バイデン氏

何があった

ジョー・バイデン氏は、先月29日に南部サウスカロライナ州で行われた予備選で,予想外の大勝利を収めた。その勢いに乗って善戦し、代議員の人数でバーニー・サンダース氏と競り続けられる位置につけたいというのが、スーパー・チューズデーにかける期待だっただろう。そういう意味では、3日夜の結果はバイデン氏によって予想をはるかに超える大成功だったはずだ。

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○ 注目ポイント

1) サウスカロライナでは、バイデン氏が黒人有権者からいかに支持されているかがはっきりした。同じことが3日にも、ノースカロライナ、ヴァージニア、アラバマといった南部各地で繰り返され、バイデン氏は一貫して約60%の得票率を獲得した。テキサス州では、ヒスパニック系有権者に支持されるサンダース氏が有利と思われていたが、バイデン氏を支える黒人票がそれを相殺した。

2) バイデン氏の勢い、モメンタム(勢い)ならぬ「ジョーメンタム」は本物だった。出口調査によると、スーパー・チューズデー直前の数日間に誰を支持するかを決めた有権者は、圧倒的にバイデン氏に流れた。有権者の半分近くが期日前に投票したカリフォルニア州では、直前に決めたという人の支持だけでは勝てなかったものの、それ以外の州では決定的な力を持った。バイデン氏は、自ら遊説して回らなかったアーカンソーやテネシーといった州でさえ、勝つことができた。勢いに乗るというのは、それほど強力なのだ。

3) 党内の後押しが大きな意味を持った。2日はエイミー・クロブシャー上院議員(ミネソタ州選出)が大統領戦の候補者争いから撤退し、バイデン氏の支持に回った。クロブシャー氏の地元ミネソタ州では、同氏とサンダース氏の接戦になる予想だったが、結果的にバイデン氏がほぼ2ケタのポイント差で勝利した。バイデン氏が2日にダラスで開いた集会では、クロブシャー氏のほか、1日に撤退したピート・ブタジェッジ前インディアナ州サウスベンド市長、テキサス州で人気の高いベト・オローク前下院議員が参加し、バイデン氏を応援した。そのテキサス州でもバイデン氏は、世論調査予測を大きく上回る好成績を残した。

○ 次はどうする

バイデン氏にとって3日夜は非常にめでたい夜になった。しかし厳しい戦いはすぐに再開する。サンダース氏との州ごとの競争は、下手をすると7月の全国党大会まで延々と続くかもしれない。各地で勢力を広めてきたサンダース陣営と互角に戦うには、バイデン陣営は必死に資金を集め、各地の態勢も急ぎ整えなくてはならない。

そうした中、共和党はまたしても、バイデン攻撃を開始するはずだ。

バーニー・サンダース氏

○ 何があった

サンダース上院議員(ヴァーモント州選出)は、スーパー・チューズデーで他の候補をノックアウトしたいと期待していた。しかし実際の結果は逆で、サンダース氏はこれからバイデン氏と、ヘビー級の全15ラウンドをフルに戦うことになりそうだ。スーパー・チューズデー最大の票田カリフォルニア州では勝ちそうだが、残る13州の少なくとも9州は落としてしまった。

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○ 注目ポイント

1) ラテン系有権者は今も、サンダース氏をしっかり支持している。2016年の前回大統領選と異なり、今のサンダース氏の支持基盤は、リベラル派の白人限定ではない。ラテン系の特に若年層のサンダース人気は、ネヴァダ州の予備選ではっきりした。そしてスーパー・チューズデーでも、出口調査によると投票した若いラテン系有権者の35%が、サンダース氏を支持した。

2) 若い有権者といえば、サンダース氏はまたしても、29歳未満の票を独占した。バイデン氏が若者票の17%しか得られなかったのに対し、サンダース氏は実に65%を獲得した。

ただし、若い有権者の投票率そのものが特に普段から上がっていないのが、サンダース陣営にとっての課題だ。 スーパー・チューズデーに参加した州で特に投票率が増えた層があったとすれば、それはむしろ、郊外にすむ穏健派だった。つまりは、バイデン氏の支持層だ。

3) ヴァーモント州はサンダース氏の地元かもしれないが、それほど甘くはなかった。サンダース氏は、有利だと思っていたミネソタやマサチューセッツ、テキサスといった複数の州で敗北した。しかし、なにより意外だったのは、地元ヴァーモントの得票率が50%にしかならなかったことかもしれない。2016年に得票率85.7%で同州で勝利し、すべての代議員を獲得した2016年を踏まえると、驚きの結果だった。

○ 次はどうする

スーパー・チューズデーでサンダース氏は、最も有利なカリフォルニア州で投票がまだ終わらないうちに、「勝利」演説を行った。そして演説を聞き終えた支持者はすぐに帰宅した。サンダース陣営がどういう気持ちだったか、この態度がよく物語っている。本人も熱烈な支持者も、まさかこういう結果は望んでいなかったのだ。

とは言うものの、たとえ今のバイデン氏が絶好調に見えるとしても、サンダース氏の集金力は図抜けている。2月だけで4650万ドル(約50億円)もの政治献金が集まっているのだ。そしてサンダース陣営には、前回選挙の経験者が揃っている。ヒラリー・クリントン氏を相手に、州をひとつひとつめぐって予備選を戦い抜いた側近たちだ。

カリフォルニアを除けば、この火曜日はサンダース氏にとっては厳しい夜だった。しかし、民主党の候補指名争いはまだまだ終わらない。

負けた人たち

マイケル・ブルームバーグ前ニューヨーク市長

○ 何があった

ブルームバーグ氏は典型的とは程遠い選挙戦略を選び、予備選序盤には参加せず、スーパー・チューズデーに集中し、大金を注ぎ込んだ。

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○ 注目ポイント

1) ほとんどの候補者は民主党支持者に好感されていたが、ブルームバーグ氏は例外だった。たとえばヴァージニア州では、予備選投票者の56%が、同氏を好ましく思っていなかった。手の込んだテレビCMやピカピカのダイレクトメールに何億ドルと使ったところで、有権者に信用されていなければ意味はない。

2) ブルームバーグ氏はアラバマ、ノースカロライナ、ヴァージニアの各州でテレビやラジオのCMに3400万ドルを使った。バイデン氏はその何分の1しか使わなかったが、それでもその3州で勝った。ブルームバーグ陣営は早くから、選挙事務所に誰もいないし支援者集会もガラガラだなど、問題が指摘されていたが、どれも今回の悲惨な結果の予兆だったのだ。

3) それでも、ほんの数週間前には支持率が急上昇していたのだ。しかしそこへ来てラスヴェガスでの討論会があり、エリザベス・ウォーレン上院議員によってボロボロに論破された。討論会での出来不出来は今回の大統領選にあまり影響していないが、あの討論会には意味があった。

○ 次はどうする

4日に撤退を発表した。今後はバイデンを支援する方針という。

ブルームバーグ氏はかねて、実際に民主党候補にならなくても、自分は出馬することで「ドナルド・トランプの再選を阻み、バーニー・サンダースの党候補指名獲得を阻止する」のだと、それが目標だと表明していた。

エリザベス・ウォーレン上院議員

○ 何があった

アイオワ、ニューハンプシャー、ネヴァダ、サウスカロライナの各州で連敗したウォーレン上院議員について、勝てる州が果たしてあるのかというのが、政治アナリストの注目するところだった。

「ない」というのが、スーパー・チューズデーではっきりした。地元マサチューセッツ州さえ、勝てなかったのだ。勝ったバイデン氏は今回の予備選に先立ち、一度も同州を訪れていないし、選挙CMも流していないのに。

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○ 注目ポイント

1) 地元州でまったく勝てなかった。かなり恥ずかしいくらい。出口調査によると、男性、女性、若者、高齢者、白人、黒人、富裕層、貧困層、リベラル、穏健派、高学歴、低学歴――どのグループでも勝てなかった。

2) ウォーレン氏はマサチューセッツで数人、ヴァージニア州で1人、代議員を獲得する。ほかの州でも数人は得られるかもしれない。もし7月の全国党大会までバイデン氏とサンダース氏の伯仲が続き、明確な勝者がなければ、ウォーレン氏が獲得したわずかな人数が大きな影響力を持つかもしれない。党の指名が誰にいくかの決定権を、ウォーレン氏が握れるとしたら、このスーパー・チューズデーを戦った意味があったのかもしれない。それしかないだろうが。

○ 次はどうする

ウォーレン氏はまだ選挙資金を集め続けているし、これから予備選のある州で運動を続けると述べている。しかし、サンダース陣営からは早く撤退して自分たちを支援するようにと、相当の圧力がかかるはずだ。穏健派の候補たちは次々と撤退し、バイデン氏支持で結束しただけに。

両候補は1月の討論会などで互いを強い口調で非難しあった。両陣営の関係も悪化し、サンダース氏の支持者たちはソーシャルメディアでウォーレン氏を中傷した。その人たちは今となっては、その振る舞いを後悔しているかもしれない。