著名アーティストが配信で演奏、新型ウイルスによる隔離を乗り越えるために

マーク・サヴェージ、BBC音楽記者

Yungblud, Chris Martin and Christine & The Queens
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(左から)ヤングブラッド、クリス・マーティン、クリスティーン・アンド・ザ・クイーンズなどがソーシャルメディアを使い、自主隔離中の人々に音楽を届けた

新型コロナウイルスの流行を受けて世界各地で自主隔離や外出禁止が実施されている。そのなか、ポップスターたちが大勢の「退屈」を紛らわせようと、インターネット上で演奏を披露し、話題となっている。(文中敬称略)

イギリスのロックバンド「コールドプレイ」のボーカリスト、クリス・マーティンは、インスタグラムで即興で数曲を演奏したほか、ファンからの質問に答えたり、デイヴィッド・ボウイの「ライフ・オン・マーズ」をカバーしたりした。

カントリー歌手のキース・アーバンもインスタグラムでライブを実施。途中では、妻で俳優のニコール・キッドマンも登場した。

アーバンは妻のことを「たった1人の観客」と呼んだ。

イギリスのパンクポップ歌手ヤングブラッドは米ロサンゼルスから1時間ほど生配信し、ファンに「ベッドやキッチンテーブル、ソファに上がって! ジャンプ!」と呼びかけた。

この生配信には女優のベラ・ソーンやラッパのマシン・ガン・ケリーも登場し、料理コーナーや酒を飲み交わすゲームなども行われた(もちろん、使われたのはビールの「コロナ」だった)。

ヤングブラッドはこの配信を通じて「みんなに前向きな気持ちと笑い、気持ち」を与えたかったと話すとともに、自分自身も楽しくなれたと語った。

カルチャーサイト「Vulture」の取材でヤングブラッドは、「ファンとつながる機会を奪われるなんて考えられない」と話した。

「今は諦めず、既存の枠にとらわれずに考えるべき時。素晴らしいアートは、悪い状況や絶望の中から生まれるものだ」

フランスのシンガー・ソングライター、クリスティーヌ・アンド・ザ・クイーンズも、パリのレコーディングスタジオから生配信で演奏を届けた。

こうしたミュージシャンのアイデアは演劇界にも派生した。新型ウイルスの影響で公演が中止となったロンドン・ウエストエンドの「ザ・ショーストッパーズ」は、フェイスブック上でライブパフォーマンスを披露した。

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「金銭的に大打撃」

こうしたインターネット上でのパフォーマンスは、今必要とされているクリエーティブな発散の場や、ファンとアーティストのつながりを作ってくれている。しかしツアーなどが事実上、中止となっているアーティストにとって、その損失を補うものではない。

ロンドンで公演中止を決めたロイヤル・アルバート・ホールは、「金銭的に大打撃だ」と語った。

同ホールは声明で、「私たちのドアは世界に開かれるためにある。それを閉めることは私たちの存在そのものに反する」と説明。

「しかし今は平常ではない。世界を見守るためにはドアを閉めるのが最善だという特異な状況だ」

イギリス政府が人々に「パブやクラブ、劇場といった施設」を避けるよう勧告する前、同国の音楽会場基金は、イギリス全土でコンサートの参加率が27%下がっているという報告書を発表した。フェスティバル主催者の業界団体も、会員のチケット販売数が昨年の同時期に比べて44%下がっていると指摘している。

多くのアーティストやスタッフは生興行で収入を得ているだけに、新型ウイルスによる財務上の影響は厳しい。ある推計によると、今回のウイルス流行によってコンサート業界は50億ドル(5400億円)の損害を受ける可能性がある。

インディーズ・ミュージシャンのフランク・ターナーは、フェイスブックでの配信で「金銭的に苦しい思いをしているツアースタッフのため」にファンドレイジングを行うと発表した。

ウェールズのフォークバンド「カラン」はツアーをキャンセルし、5000ポンド(約70万円)の損害をこうむった。これを補填するため、ファン個人に宛てた曲を作るなどの企画を立ち上げている。

このほか、アーティストを支援するために楽曲やグッズを購入したり、支援サイトから直接資金を送るといった活動が増加している。

一方でイギリスでは、政府が劇場などを避けるよう市民に呼びかけながら、実際に閉鎖を命令しなかったことで、主催者が休業補償や保険金の支払いなど資金援助が受けられないと怒りの声が上がっている。