【東京五輪】 男女比はほぼ半々、それでも残る格差とは

ホリー・ホンダリッチ、BBCニュース(ワシントン)

Mandy Bujold

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マンディ・ブジョルド選手は、出産によって大会出場資格を失うところだった

1896年にアテネで行われた第1回近代オリンピックで、創始者のピエール・ド・クーベルタンは女性の参加を禁止した。

4年後のパリ大会には、女子5種目に22人の女性が参加。一方、この大会に出場した男性選手は1000人を超えていた。

そして2021年、東京大会の男女比はほぼ半々になった。国際オリンピック委員会(IOC)によると、約1万1000人のアスリートの49%が女性で、史上初の「ジェンダーバランスの取れた」大会だ。

パラリンピックでも、参加者の少なくとも40.5%が女性で、2016年のリオ大会よりも女性選手が100人ほど増えているという。

しかし、第1回から125年がたった今も、オリンピックではジェンダーをめぐるミスはなくならない。間違いを慌てて訂正しなくてはならない場面も続いている。格差是正への道のりがいかに長いか、こうしたことからもうかがえる。

女性オリンピック選手が、金メダルを狙う以前に直面している困難の一部を紹介する。BBCは、この記事に関するコメントをIOCに求めたが、返答はなかった。

出産後に資格停止に

カナダのマンディ・ブジョルド選手(33)は、ボクシング女子フライ級のトップ選手だ。

地元カナダでは11度、パン・アメリカ大会では2度の優勝経験があるブジョルド選手は2018年、娘のケイト・オリンピアちゃん(あだ名は「KO」)を産むために休暇を取った。この時、世界ランキング8位だった。

ブジョルド選手は東京五輪での試合復帰を計画していたが、新型コロナウイルスのパンデミックで予定が狂った。ボクシングの五輪出場権を決める試合は相次ぎ中止され、東京大会の予選運営を担ったIOCのボクシングタスクフォース(BTF)は、2018年と2019年に行われた3つの大会を代表選出の参考にすると発表した。2018年と2019年はちょうど、ブジョルド選手が産前産後で試合に出ていない期間だった。

ブジョルド選手は出場権を得るため、場外戦を強いられることになった。スポーツ仲裁裁判所(CAS)に異議申し立てをしたのだ。

東京大会の始まる数週間前、スイス・ジュネーヴにあるCASは、ブジョルド選手の訴えを認め、出場権の決定期間が産前・産後と重なる女性選手には、便宜を図るべきだと判断を示した。

「私の五輪の夢はまだ終わっていない。(出場権を得るための)闘争は、選手生活の中でも特に大きな闘いだったし、一番意義深いものだった」とブジョルド選手は話す。

しかし女性の権利活動家は、ブジョルド選手が大会開始前に法廷で羽目になったこと自体、五輪にジェンダー格差があることの、確たる証拠だと指摘する。

米パーデュー大学でジェンダー学を研究するシェリル・クッキー教授は、「スポーツは男性選手のために作られ、設計され、組織されている」と指摘する。

学術誌「スポーツ社会学」の編集長でもある教授は、例外が認められるときは「『特別』対応だと見なされる」と指摘。つまりこれは、女性の競技が男性の競技より「劣っている」と暗に言われているに等しいのだと、教授は言う。

娘を取るか、五輪を取るか

COVID-19対策の一環として、IOCは出場選手の家族が東京に同行することを禁じた。

カナダのバスケットボール代表キム・ゴーチャー選手は、このルールのため、3度目の五輪出場と生まれたばかりの娘を天秤(てんびん)にかけなくてはならなかった。

ゴーチャー選手は6月、インスタグラムに投稿した動画でこう語っている。

「授乳中の母親かオリンピック選手か、私はどちらになるか選択を迫られている。両方は認められないのだという」

IOCは当初、ゴーチャー選手の正式な要請を拒否。「大会関係者として参加資格を認定されていないの人物が外国から」大会に参加することは難しいとしていた。

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カナダのバスケットボール代表ゴーチャー選手は、幼い娘の同行を求めて闘わなくてはならなかった

しかし大会の3週間前になり、ゴーチャー選手の動画での訴えと世間からの圧力を受け、組織委員会はこの見解を覆した。

女性スポーツ研究を専門とする米ミネソタ大学タッカーセンターのニコール・M・ラヴォワ所長は、「こうしたことは受け入れられない。赤ちゃんは観客でも『参加資格のない人物』でもない。世話が必要な子どもだ」と指摘した。

「女性の価値をうたい、女性を尊重するとリップサービスしながら、このような過ちは許されない」

クッキー教授もラヴォワ所長も、こうした一連の出来事はあたかも、女性スポーツには男性の競技にはない、特別の特記事項があると言わんばかりだと指摘する。つまり、実のところスポーツの世界は女性のいるべき場所ではないのだと、そういう考えを暗に強調しているかのようだと。

IOCのジェンダー格差

IOCは五輪出場選手のジェンダー平等を優先事項に掲げているが、その基準を自身に適用していない。

IOC理事会の女性比率は33.3%、IOC全体の女性メンバーも37.5%に過ぎない。

「IOC会長に女性が選ばれたことはない。それが何よりの証拠だ」とラヴォワ氏は指摘する。

そしてここ数カ月、五輪関係者の男性たちが次々と、IOCのジェンダー平等のメッセージを損なう行動を起こしている。

組織委員会の会長だった森喜朗氏は2月、日本オリンピック委員会(JOC)臨時評議員会で、「女性がたくさん入っている理事会の会議は時間がかかります」などと発言。不適切だったとして会長職を辞任した。

その1カ月後には、開閉会式の演出を統括するクリエイティヴディレクターだった佐々木宏氏が、出演者の容姿を馬鹿にする演出を考えていたことが判明し、やはり辞任した。

今週にも、IOCのジョン・コーツ副会長が、豪クイーンズランド州のアナスタシア・パラシェ首相に「マンスプレイニング」したとして、強い批判を浴びている。マンスプレイニングは、「Man(男性)」と「Explain(説明する)」を合わせた言葉。女性を無知だと決めつけ、男性が本来必要のない説明をしたり指図したりする行為を指す。

コーツ氏は21日、同州ブリスベンが2032年の五輪開催地に選ばれたことを受けて、パラシェ氏と共に記者会見に出席した。その際、パラシェ氏に「あなたは五輪の開会式に出たことがなく、段取りや取り決めを知らない」と述べ、開会式の重要性を説明。「あなたは(東京大会の)開会式に出るんです。居残ったり部屋に閉じこもったりしてはいけない」と、語りかけた。

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コーツIOC副会長、女性の州首相に対する「マンスプレイニング」で批判

女性の権利活動家らは、IOCが男性優位の場所であり続ける限り(ラヴォワ会長は、「古き良き男性限定クラブ」だと揶揄(やゆ)した)、女性スポーツ選手は不利な状況に置かれ続けるだろうと指摘ている。

現状、オリンピックにおけるジェンダー平等の進捗(しんちょく)は、ブジョルド選手やゴーチャー選手が直面したような問題に阻まれ、まだら模様だ。

クッキー教授は、「運営幹部の大半が男性でなかったら、一連の問題はそもそも問題扱いされただろうか」と問いかける。

「そうは思えない」と教授は言う。