犬や猫の認知症、85%が診断されず イギリスの獣医師たちの取り組み
サラ・イーズデイル、BBCウェールズ・ニュース

画像提供, Jacqui Bassett
ポピー(左)は14歳の時に認知症と診断された
スタッフォードシャー・ブルテリアの雑種のポピーは活発な飼い犬だったが、飼い主のジャッキー・バセットさんはある日、ポピーの行動に変化が出ていると気づいた。
その時14歳だったポピーは、ぼーっと宙を眺めて立ち尽くしたり、夜中に起きて歩き回ったり、家具の後ろから出られなくなってしまうことがあったという。
心配したバセットさんは、ポピーを地元の獣医師のところに連れて行った。そこで、ポピーは犬の認知症と診断された。
イギリスの獣医師グループ「Vets4Pets(ペットのための獣医師たち)」は、ペットの認知症の認知度を高めようとしている。彼らによると、認知症になった犬や猫の85%が、診断されないままだという。
ポピーと飼い主のジャッキー・バセットさん
「Vets4Pets」は、認知症は早く発見するほど治療効果が高いため、犬や猫の認知症がもっと認知されることが必要だと述べている。
同グループによると、老齢の犬の4匹に1匹、猫では3匹に1匹が、認知症を発症する可能性がある。
7歳以上のペットを対象に、認知症の症状を確認する飼い主用オンラインツールも開発されている。
ポピーは診断を受けたことで、飼い主が治療プログラムを通じてポピーの行動を理解し、介助できるようになった。
「ポピーは症状の進行を遅らせる薬を飲んでいますが、私たちも助ける方法を学びました。辛抱強く、時間をかけて」とバセットさんは話した。
画像提供, Jacqui Bassett
ポピーとその子犬
「ポピーがいろいろ理解できなくなったと、私たちが理解そているので、もっと助けられます」
動物行動学の博士で「Vets4Pets」の臨床ディレクターを務めるヒュー・ステイシー獣医師は、認知症は「ゆっくりと発症」するため、毎年の身体検査で判明するとは限らないと話す。
「認知症は、人間が単に年老いたのだと考えてしまうような行動の変化に現れる。ペットが家の中で方向感覚を失ったり、家の中で事故を起こしたり、あるいは夜中に眠らず落ち着かない様子だったりした場合、飼い主は単に老化の一部で、何もできないと思ってしまいがちだ」
むしろ早期発見によって、症状の進行を遅らせれば、ペットにとって良い結果をもたらすと、ステイシー獣医師は言う。
「動物の脳機能改善を助けるため、栄養状態を改善するという意味で、食事療法は強力な効果を発揮する」
「加えて、ペットのいる環境や、飼い主としての接し方を変えることで、ペットの暮らしも楽になる」
「胸が張り裂けそう」
ポピーの家族はいろいろと細かく工夫しながら、認知症があっても満ち足りた暮らしができるよう、ポピーを支えている。
バセットさんは、「ポピーはほとんどの時間、まだ幸せだと思いたいし、実際にそうだと思います」と話した。
「ペットの老いはただでさえ胸が痛いのに、そこに認知症が加わると(中略)以前とは違う犬になってしまう」
「でもポピーが質の高い暮らしを続けて、あちこち嗅ぎまわって、食べたり飲んだりできる限り、それで大丈夫」
「獣医師と緊密に協力しているので、いつさよならを言うべきか、決めるのも手伝ってくれます」