気候変動は「順応するか死ぬかの問題」 英環境庁が警告

デイヴィッド・シュクマン、科学編集長

Floodwaters in East Cowick

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イギリスの政府外公共機関である環境庁は13日、同国が気候変動の影響に対応しきれていないと警告する報告書を発表する。このままでは洪水で大勢の人が亡くなる可能性があると指摘する。

欧州では今年、ドイツで発生した洪水で何十人も亡くなるなど、各国で気候変動の影響が懸念されている。

環境庁の報告書は、異常気象への対応力を高めなければ「こうしたことがイギリスでも遅かれ早かれ起こるだろう」と結論付けている。

同庁のエマ・ハワード・ボイド長官は、「これは順応するか死ぬかの問題だ」と語った。

報告書は意図的に、惨事を警告する論調で書かれている。政府や企業、コミュニティーなどに海水面上昇や異常な降雨、旱魃(かんばつ)といった地球温暖化の影響に備えるよう呼びかけるためだ。

BBCは発表に先駆け、報告書の内容を把握した。気候変動によるさまざまなリスクについて、イギリスがどれほど対応力を持っているか評価するものとなっている。

報告書を受けて環境省は、地球温暖化の影響からイギリスを守る政策を取っていると述べた。

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1884~2020年のイギリスの平均気温推移(出典:英気象庁)

「時間が足りなくなってきている」

現時点での予測では、21世紀末には地球の平均気温が摂氏3度上昇する見通し。

しかし環境庁は、たった2度の上昇でも、以下のような厳しい影響が表れるとみている。

  • 冬季の降雨量は2050年代までに6%、2080年代までに8%上昇する(1981~2000年平均との比較)
  • 一方、夏季の降雨量は2050代年までに15%ほど下がる
  • ロンドンの海面水位は2050年代までに23センチ、2080年代までに45センチ上昇する
  • 2050年代までに、河川のピーク時の流水量が最大で27%増加する。一方で、夏季には最大で82%減少する
  • イギリスの水消費量は1日150億リットルだが、2050年までにさらに1日34億リットル必要となる

ハワード・ボイド長官は、「我々が正しいことをすれば、気候危機への対応は成功する。しかし効果的な順応対策を講じるには時間が足りなくなってきている」と述べた。

「ドイツでは夏に起きた洪水で約200人が亡くなった。どれだけ堤防を高くしても、我々が住環境や職場、旅先などを気候危機がもたらす異常気象に耐えられるように作り替えなければ、同じことがこの国でも遅かれ早かれ起こるだろう」

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ドイツで今年7月に起きた洪水では約200人が亡くなった

環境庁は、新たな洪水対策を考案すること、官民がより緊密な協力関係を築くこと、炭素を吸収し雨を蓄えるような自然を回復させることなどを要求している。

ハワード・ボイド長官は、「正しいアプローチを取れば、我々はもっと安全に繁栄できる。準備をし、行動し、生き抜こう」と付け加えた。

今年7月にドイツを襲った洪水とその死者は、イギリスで過去に起きた大規模洪水を思い起こさせる。

イギリスでは1953年、嵐によってイングランドで307人、スコットランドで19人が亡くなっている。

この悲劇的な災害を受け、イギリスでは洪水対策に大幅な改定が加えられ、沿岸の防護に大規模な投資が行われた。ロンドンには防潮堤テムズ・バリアが建設された。

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1850~1900年の世界平均気温との差の推移。灰色の折れ線が現在までの観測値で、今後については5つのシナリオが想定されている。オレンジが化石燃料を重点的に使い続けた場合、緑が持続可能性に基づいて行動した場合(出典:気候変動に関する政府間パネル)

5つの現実

今後の洪水対策にイギリス各地の政府が動き出している中、環境庁の報告書は、気候変動に関する5項目の「現実」を掲載している。

  • 環境庁単独では「増加する洪水や沿岸地域のリスクから全員を守ることはできない」:同庁はかねて、海面上昇や降雨パターンの変化による長期的な危険性について警告してきた
  • 気候変動は「清潔で十分な量の水の確保を難しくする」:人口増加により、イングランド東部や南東部では水の需要も拡大している
  • 現状の環境に関するルールは「変動する気候に対応できていない」:水の利用や汚染に関する規制は、このような急激な変化を考慮して作られていない
  • 「生態系は気候変動の速さについていけない」:これは特に淡水での生物多様性が失われる要因となっている
  • 「もっとひどい環境関連の出来事が起きるだろう」:洪水、水不足、汚染などによる緊急事態の頻度が上がり、深刻さも増す見通し

環境庁は洪水対策について、「通常営業」のアプローチではもはや適切ではないと述べ、新しい方針を立てるよう呼び掛けている。

実際には、企業と政府、地方自治体がより良い協力体制を作り、企業や不動産所有者が建物に基本的な洪水対策を講じることなどが挙げられる。

また、上流で雨を蓄える高地の回復、表面流水を少なくするための土壌管理など、自然を利用した洪水リスクの縮小も求めている。

さらに、各地で洪水のリスクを警告する新たな体制や技術の試験運用や、緊急サービスとの緊密な連携なども提案している。

一方で、政府がこれまでに数十億ポンドを洪水対策に費やし、今後の予算にも組み込まれていることを評価。

また、11月の国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)の開催国として、気候変動に順応するためにコミュニティーへや自然環境への支援を重要視していることも認めた。

環境省の反応は

報告書を受け、環境省はいくつかの気候変動対策を強調。洪水や沿岸地域の浸食から33万6000件の建物を守るために52億ポンドを投じていることや、全国規模の上水道管理枠組みの策定、6億4000万ポンド規模の「気候のための自然基金」の設立などを挙げた。

同省の報道官は、「全国の気候変動への耐久力を上げるため、我々は強力な活動を行っている。政府の政策にも、気候変動への順応は組み込まれている」と語った。

「また、COP26を主催することで世界中に気候への順応を働きかけ、コミュニティーや自然を守っていく」