英首相官邸、昨年12月の感染対策中にクリスマスパーティーか ルール厳守?
ローラ・クンスバーグ、政治編集長

画像提供, EPA
首相官邸のあるダウニング街のクリスマスマーケットを見学するボリス・ジョンソン英首相
イギリスには、「政治の1週間は長い」という古い表現がある。政界の移り変わりの激しさを表すものだ。
この言葉が正しいなら、政界での1年は何十年とも、何百年とも言えるだろう。
しかし、12カ月前に英首相官邸で起きた出来事をめぐる今回の騒ぎは、今現在にも関係がありそうに思えるし、単に過去の出来事とは片づけられなさそうだ。騒ぎの発端は、英タブロイド紙ミラーの12月1日付の記事だった。
ミラーは、首相官邸では昨年のこの時期、「飲んだくれパーティー」が何回か開かれていたと報じた。官邸で非公式のパーティーがあったと語る官邸関係者の発言は、記事内では匿名にとどまっていた。
それでも、労働党とスコットランド国民党(SNP)の野党党首2人がこの件を下院で取り上げるには、十分な内容だった。
その結果、ボリス・ジョンソン首相は下院でこの件について野党から問いただされたわけだが、首相は会食が催されたことを否定せず、「ルール厳守」で行われたと述べるにとどまった。
しかしこの首相発言は、この日の朝、メール紙の記事を受けて官邸報道官が記者団に説明した内容とは食い違っていた(訳注:官邸報道官は、「官邸職員はクリスマスパーティーを開いたのか」という質問に「ノー」と答えていた)。
さらに、昨年12月18日のパーティーに参加したという消息筋は後に、私たちにこう話した。昨年のそのパーティーには、「数十人」が参加した。食べ物やアルコールが出て、様々なゲームもあり、真夜中を過ぎても続いたのだと。
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昨年12月のパーティー当日は、英南東部ケント州で検知され「ケント株」と呼ばれていた(後に「アルファ株」と呼ばれるようになった)変異株について、官邸スタッフが話し合っていたため、むしろ官邸内の空気は盛り上がりに欠けていたという話もある。
ロンドンでは昨年12月14日に最も制限の厳しいティア3の規制が発令され、同じ世帯や支援バブル外の人々と屋内で集まることが禁止された。
当時のルールでは、職場で正当性のある集まりは認められていたが、パーティーや宴会など、社交目的の集まりは明らかに禁じられていた。
ジョンソン首相がクリスマス期間中の制限緩和を中止し、「クリスマスをキャンセル」したのは、パーティーの翌日の19日だった。
ミラー紙の報道を見過ごせない理由は2つある。
まず、野党はこれまでにも、ジョンソン首相や側近らが(首相はこのパーティーに参加したとは言われていないものの)イギリス国民に行動制限を要求しておきながら、自分たちはそれを守ろうとしなかったと、再三批判してきた。昨年12月の出来事は、野党のこの主張にとって追い風になるだろう。
さらに、今の私たちは奇妙に中途半端な状態にある。新しいオミクロン変異株とその影響についてもっと知ろうと、科学的情報を待っている段階だ。
首相官邸も我々も、オミクロン株によって事態を急激に後退させる必要がありませんようにと、必死に願っている最中だ。感染拡大を防ぐために、またしても生活を厳しく制限する必要がありませんようにと。
その宙ぶらりんな状態に、今回のメール報道が飛び込んできて、そのせいで首相官邸がどこまでまじめで本気なのかが分からなくなった。
そこへ来て今回の報道だ。政府が実は12カ月前に、自分たちで決めた感染対策を劇的にひっくり返していたのだと知らされても、私たちの不安はほとんど減らない。