【解説】 ウクライナがEU加盟候補国へ 何が変わる? ロシアの反応は?

The EU Commission headquarters in Brussels displaying the colours of the Ukrainian Flag in May 2022

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欧州連合(EU)各国は23~24日に行われる首脳会議(サミット)で、ウクライナの加盟申請を正式に認定する見込みだ。

一方で同国のウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ロシアが報復措置としてウクライナでの攻撃を激化させる可能性があると警告している。

EU加盟手続きはどのようなもので、ロシアはどのような反応を示す可能性があるのか、解説する。

欧州連合とは?

第2次世界大戦後に欧州で結成された経済・政治共同体が、現在の欧州連合となっている。現時点で27カ国が加盟している。

EU域内では、モノやサービス、ヒトが自由に移動できる。EU市民は域内のどこにでも住み、働くことができる。

EUの単一通貨ユーロは現在、27加盟国のうち19カ国、3億4000万人が使用している。

また、食品安全や農業、雇用に関わる権利など、さまざまな分野で共通の基準を設けている。

さらに、欧州の中でも貧しい国々に対し、経済強化のための助成金を拠出している。

数字で見るEU

  • 加盟国で最も人口が多いのはドイツの8431万2900人
  • 人口が最も少ないのはマルタの44万3900人
  • 1人当たり国内総生産(GDP)が最も大きいのはルクセンブルクの11万300ユーロ(約1600万円)
  • 1人当たりGDPが最も少ないのはブルガリアの1万650ユーロ(約153万円)
  • 最新の加盟国はクロアチア(2013年)

※出典:Worldometers、世界銀行、EU

なぜウクライナは加盟を目指しているのか

ゼレンスキー大統領は、今年2月にロシアの侵攻が始まった5日後に、EU加盟を申請した。

ウクライナ側は即時の加盟を求めているが、その手続きには数年かかる可能性もある。

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ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領(中央)は今年2月に欧州連合への加盟申請を行った

EUに加盟すれば財政的な利点があるだろう。しかし、ブリュッセルのシンクタンク「欧州政策研究センター」のザック・パイキン博士は、ウクライナの動機は経済的なものではないと指摘する。

「EUに加盟することで、ウクライナはロシア世界の一部ではなく、欧州の独立主権国家という地位を確立できるだろう」と、パイキン博士は述べた。

EU加盟までの流れは?

まず欧州委員会が、申請した国が加盟候補にふさわしいかどうかを判断する。安定した民主主義政府があるかどうか、人権が尊重されているか、自由市場経済が存在しているかどうかなどが基準となる。

この手続きの後、欧州委が申請国を加盟候補に推奨すると、次は全加盟国の承認が必要となる。

全加盟国が承認し、正式な加盟候補となった国は、数年をかけてEU法や規制を国内法に適用していく。

このプロセスが終わって初めて、加盟候補国は加盟条約に署名することができる。この条約も、全加盟国が批准する必要がある。

加盟にはどれくらいの時間がかかるのか

ブルガリアやルーマニア、クロアチアといった直近の加盟国は、一連の手続きに10~12年を費やした。

アルバニアと北マケドニア、モンテネグロ、セルビアは正式な加盟候補国となって数年がたっているが、手続きは滞っている。

トルコも1999年に加盟候補国となったものの、人権侵害への懸念があることから、加盟交渉は中断したままだ。

ウクライナの隣国のモルドヴァも、ウクライナと同じ日に加盟候補国に認められた。ジョージアも同時期に申請したが、いくつかの改革が必要と判断された。

ウクライナがEUに加盟した場合

  • 領土の広さではEU第1位となる:60万3550平方キロメートル
  • 人口は4413万人で、第5位
  • ウクライナの1人当たりGDPは3724ドル(約51万円)と、EU平均の9分の1しかない
  • EUの穀物輸入の30%をすでに担っている

現在のEUとウクライナの関係は? 他にやるべきことは?

ウクライナとEU加盟国との通商では2017年以降、いわゆる「連合協定」に基づいて関税が撤廃されている。

それ以前も、2016年に「深化した包括的自由貿易協定(DCFTA)」を結んでいたため、関税は低く抑えられていた。

またEU加盟申請への準備として、ウクライナはすでに数々の国内法や規制をEU基準に変更している。

欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、ウクライナは「良い仕事をしている」と述べた一方で、加盟に向けてはさらに「重要な改革」が必要だと指摘した。

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欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長

これには、法の統治の強化、人権状況の改善、オリガルヒ(新興財閥)の権力縮小、汚職対策などが挙げられている。

欧州政策研究センターのパイキン博士はさらに、「ウクライナは一人前の市場経済を構築する必要がある。旧ソ連国には難しい課題だ」と指摘した。

また、大きな批判を浴びている司法体系の整備も、課題の一つだという。

EUはどのように新規加盟国を助けているのか

EU加盟から15年がたったルーマニアでは国民総所得が3倍に、ブルガリアでは2倍に拡大した。

EUは欧州構造投資基金(ESIF)を通じ、両国に数百億ユーロを投入している。こうした資金は、新しい道路や港の建設などに充てられ、経済開発を支援している。

2014~2020年に、ブルガリアは112億ユーロを、ルーマニアは350億ユーロを受け取っている。

一方で、各国の腐敗・汚職に取り組む非政府組織トランスペアレンシー・インターナショナルは、こうした資金の多くが汚職によって失われていると指摘する。

ブルガリアは賃金や医療、教育といった面でEU最下位を維持している。ルーマニアは1人当たりGDPで27カ国中26位から22位まで浮上した。

世界銀行によると、EU域内を自由に移動できる権利を利用し、国外で暮らしているブルガリア人は約150万人、ルーマニア人は400万人に上る。これについては、「頭脳流出」によって両国の将来の見通しに不利益が出るのではと懸念する声もある。

ロシアはウクライナのEU加盟にどう反応するのか?

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ウクライナが長らく求めている北大西洋条約機構(NATO)加盟には非常に批判的だ。しかし、EU加盟については「反対することがない」と示唆している。

しかしドミトリ・ペスコフ大統領報道官は、EUが独自の防衛軍設置を考えていることから、ロシア政府はウクライナの加盟申請を「注視していく」とし、こう話した。

「軍事や防衛、安全保障といった要素が話し合われており、我々はもちろん、そうした動きを全て徹底的に観察している」

ウクライナのゼレンスキー大統領は、同国のEU加盟申請に対してロシアが報復措置を行うかもしれないと警告した。

「もちろん、ロシアによる敵対行動の激化を見込まなければならない。こうした行動はウクライナだけでなく、他の欧州各国にも向けられるはずだ」と、ゼレンスキー氏は述べた。