【時系列で見る】 ジョンソン英政権、閣僚が次々辞任 どうしてこうなった

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Chris Pincher

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英与党・保守党の院内副幹事長を辞任したクリス・ピンチャー議員

英与党・保守党の院内副幹事長が痴漢行為などで辞任したのを機に、ボリス・ジョンソン首相が何をいつ知っていたのかをめぐり、首相官邸が事実を正確に公表していないと批判が高まっている。5日には、財務相と保健相の閣僚2人のほか、政府幹部の抗議辞任が相次いだ。

保守党のクリス・ピンチャー議員は6月30日、院内副幹事長を辞任した。英タブロイド紙サンなどが、会員制クラブで男性2人に痴漢したと報じたため。ジョンソン首相への辞表の中でピンチャー議員は、アルコール飲料を「あまりに飲みすぎて」、「自分や他の人に恥ずかしい思いをさせた」と説明した。ただし、問題行動はなかったとしている。

ピンチャー氏は2010年に北部タムワースで初当選し、テリーザ・メイ前首相の下で内閣に関わった。ジョンソン政権では外務省やレベリング・アップ(平準化、地域活性化)担当省の政務官を務めた後、2022年2月から院内幹事に就任した。

ピンチャー氏については以前から、問題行動が指摘されていた。そのピンチャー氏を院内副幹事長に任命した際に、ジョンソン首相が、同氏に対するさまざまな批判や疑惑についてどこまで知っていたのかが問題になっている。

ピンチャー氏の辞任を受けて、首相官邸と複数の閣僚は当初、ジョンソン首相はピンチャー氏の任命以前に問題行動の指摘について説明を受けていなかったと、首相を擁護した。

これについては首相が、そのような説明を受けていなかったと官邸にうそをついたことはないとも主張している。

しかし、元外務省事務次官の上院議員、サイモン・マクドナルド卿がこれに異論を唱えた。ピンチャー氏が外務政務次官だった2019年の時点で、同氏の行動に関する「正式な苦情」について、首相に「じかに」説明があったと、マクドナルド卿は指摘し、首相官邸の説明は事実と異なると批判した。

英政府は今では、確かに2019年の時点で首相はピンチャー氏への抗議について説明を受けていたものの、6月末の時点で問題があらためて浮上した際に、かつて説明を受けていたことを「思い出せなかった」のだと言い分をあらためている。ジョンソン首相もこれを認め、報告内容をもとに行動しなかったことを「ひどく後悔」していると述べた。

6月30日

サン紙が、ピンチャー氏の痴漢行為について報道。ピンチャー氏は辞任し、首相官邸高官はBBCに対して、ピンチャー氏は忠実な保守党員で、自分の行動がよろしくないものだったと自覚していると話した。さらに、現状では同氏が党からこれ以上の処分を受けることはなく、保守党議員の立場は変わらないだろうと語った。

7月1日

首相官邸は、ピンチャー氏を任命する前に首相は問題行動の指摘について承知していたのかという記者団の質問に対し、首相は承知していなかったと答えた。

報道官はこの記者説明でさらに、ピンチャー氏に関する「具体的な批判の内容」を首相は知らなかったとも述べた。

官邸はさらに、あらゆる内閣人事は内閣官房の倫理担当チームが検討するため、ピンチャー氏の任命についても「立証されていない指摘」をもとに差し止める必要があるとは判断しなかったのだと説明していた。

与党の院内副幹事長は王室財務官を兼務するため、内閣ポストにあたる。

この日の夜、ピンチャー議員は、保守党所属の地位を停止された。

7月3日

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テリーザ・コーフィー労働・年金担当相

テリーザ・コーフィー労働・年金担当相はBBC番組「サンデー・モーニング」に出演。「クリス・ピンチャーに対して性的問題行動の指摘が出ている」ことを知った上で、首相は同氏を院内副幹事長に任命したのかと質問された。

コフィー氏は質問に対して、「私の知る限り、首相はクリス・ピンチャーに対する具体的な批判内容を関知していなかった」と答えた。

なぜそれを知っているのか重ねて質問されたコフィー労働年金相は、「首相官邸報道部からの情報」だと説明した。

7月4日

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ウィル・クインス教育政務次官

翌4日、ウィル・クインス教育政務次官(子供・家族担当)はBBC番組「トゥデイ」に出演し、首相はピンチャー氏に対する問題行動の指摘を知った上で院内副幹事長に任命したのかと質問された。

クインス氏はこれに対して、「この質問が出ると予想していた。昨晩と今朝、私は首相官邸に対して強くはっきりと、これについて回答を求めた。すると、前院内(副)幹事長を任命した時点で、何か具体的な批判や苦情が出ていると、首相は関知していなかったという、疑いの余地のない答えが返ってきた」と述べた。

(なお、このクインス氏は6日に辞任した)

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ナディム・ザハウィ教育相

同じ日の午前11時半前に録画されたテレビのインタビューで、ナディム・ザハウィ教育相は、ピンチャー氏に対する指摘は、テリーザ・メイ前政権時代にさかのぼるものだが、いずれも「調査の上」、「正確ではないと判明」したと述べた。

しかし、この日の午後12時半の時点で、首相官邸は主張を修正した。首相報道官は、「解決された、もしくは正式な苦情に至らなかった内容について」ジョンソン首相は承知していたと説明した。「立証されていない指摘を理由に任命を差し止めるのは適切ではないと判断した」のだとも述べた。

この日の夜、BBCのアイオーニ・ウエルズ政治担当編集委員は、ピンチャー氏が外務政務次官だった2019年から2020年にかけて、同氏による「不適切なふるまい」に対して正式な苦情が提出されたと、ジョンソン首相は報告を受けていたと明らかにした。

この時の苦情を受けて懲戒手続きがとられ、ピンチャー氏による問題行動があったと確認されたという。

7月5日

マクドナルド卿はツイッターで、議会倫理基準コミッショナーへあてた手紙を公表。その中で、「首相官邸の当初の説明は事実と異なるし、のちに修正した言い分もまだ正確ではない」と指摘した。

マクドナルド卿は同日、BBC番組「トゥデイ」に出演。2019年の時点で、外務省の複数の同僚から、ピンチャー氏の問題行動について知らされていたと話した。2019年の時点で、苦情の内容が事実と認められ、ピンチャー氏が謝罪したことも、知らされていたという。

「内閣官房の担当幹部に、私がこのことを説明した。その官房幹部が直接、首相に事情を説明したことも知っている。なぜなら、その幹部本人が当時、私にそう話したからだ」

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ドミニク・ラーブ副首相

苦情が提出された当時、外相だったドミニク・ラーブ副首相は、マクドナルド卿の少し前に同じ番組に出演した(卿の手紙はすでに公表済みだった)。

その上で副首相は、ピンチャー氏への苦情について首相が説明を受けていたことは知らないと述べた。

「初めて聞く。知らなかったし、それが事実的に正確なのかも、はっきりとは分からない」と、ラーブ氏は話した。

後に下院ではマイケル・エリス主計長官が、確かに首相はピンチャー氏への苦情について報告を受けていたと答弁した。ただし、エリス氏は「正式な苦情」という表現は使わず、「政府関係者が懸念を指摘していた」という言い方をした。

「先週になって新しい指摘が浮上した際、首相は2019年後半のやりとりについてただちに思い出さなかった」のだと、主計長官は説明した。

先週の時点での自分たち説明が正しくなかったと、首相官邸はいつ判断したのかという質問には、「3日遅くか4日朝」のことだとエリス氏は答えた。

BBCの取材に対してジョンソン首相は、「私にまで報告が上がってきた具体的な苦情が1件あった(中略)かなり前のことで、口頭での報告だった(中略)でもそれは言い訳にならない。報告にもとづいて行動すべきだった」と述べた。

一方で首相は、かつて苦情の報告があったと、官邸スタッフにうそをついたわけではないとも主張。「私になりかわって他人が何かを言ったり、私が何を知っていたか、知らなかったか、他人が説明しようとするのに、うんざりしている」とも述べた。

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問題行動指摘された人物の院内副幹事長任命は「間違いだった」=ジョンソン首相