【解説】 中国と台湾の関係、すごく分かりやすく説明
デイヴィッド・ブラウン、BBCニュース

台湾兵のイメージ画像
アジアを歴訪中のアメリカのナンシー・ペロシ下院議長が2日深夜、台湾を訪問した。中国は、「極めて危険」な行動だと非難している。
ペロシ氏の今回の訪台は、過去25年間で、最も高位の米政治家によるものだ。
中国は台湾を、自国から分離した省で、いずれは再び中央政府の支配下に置かれるべきだと考えている。
一方で台湾は、独自の憲法と民主的に選出された指導陣を持つ独立国家を自認している。
中国の習近平国家主席は台湾「統一」は「必ず果たさなくてはならない」とし、そのための武力行使の可能性を排除していない。
台湾はどこにあるのか
台湾島は中国南東部沿岸からおよそ160キロ離れた場所にある。
いわゆる「第一列島線」に位置し、アメリカの外交政策にとって重要な、同国に友好的な地域が含まれる。

中国が台湾を統一すれば、西太平洋地域でより自由に力を誇示できるようになり、グアムやハワイなどの遠隔地にある米軍基地さえも脅かす可能性がある――。そう指摘する西側の専門家もいる。
しかし中国は、純粋に平和的な意図しかもっていないと主張している。
台湾は常に中国から切り離されていたのか
複数の史料は、清が中国を支配し始めた17世紀に初めて、台湾が完全な支配下に置かれたことを示唆している。中国は1895年に日清戦争に敗れると、台湾島を日本に明け渡した。
1945年に日本が第2次世界大戦に敗れると、台湾島は再び中国のものとなった。
しかし中国大陸では、蒋介石率いる国民政府勢力と毛沢東率いる共産党との間で内戦が勃発した。
1949年に共産党が勝利し、北京を支配下に置いた。
蒋介石と中国国民党の残党は台湾に逃れ、その後数十年にわたり台湾を統治した。
中国は台湾について、もともと中国の省だった歴史があるとしている。しかし、台湾人は同じ歴史を根拠に、自分たちは1911年の辛亥革命後に初めて建国された近代中国、あるいは1949年に毛沢東政権下で建国された中華人民共和国の一部だったことは、一度もないと主張している。

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蒋介石は台湾に逃れた後、国民党を率いた
国民党は以来、台湾で最も重要な政党の1つであり、その統治は台湾史の大部分にわたり続いた。
現在、台湾を主権国家として承認しているのは13カ国とローマ教皇庁(ヴァチカン)のみ。
中国は他国に対し、台湾を主権国家として承認しないよう、あるいは承認を示唆することがないよう、相当の外交圧力をかけている。
台湾の国防部(国防省)は中国との関係はこの40年間で最悪だとしている。
台湾は自衛できるのか
中国は、経済関係の強化といった非軍事的な手段で台湾「再統一」を実現しようとすることもできる。
しかし、なんらかの軍事的対立が起きた場合には、中国軍は台湾軍を凌駕(りょうが)するだろう。
中国はアメリカを除く他のどの国よりも多額の国防費をつぎ込んでいる。海軍力からミサイル技術、航空機、サイバー攻撃に至るまで、膨大な範囲の能力を活用できる状態にある。
中国の軍事力の大半は別の場所に注がれているものの、例えば現役部隊の全体像を見ると、中国と台湾の規模には大きな差があることがわかる。

西側の専門家の中には、台湾はせいぜい中国の攻撃を遅らせて、中国の上陸作戦部隊が沿岸部から上陸するのを阻止し、ゲリラ攻撃を行いながら他国からの援助を待つことしかできないだろうと予測する人もいる。
そうした援助は、台湾に武器を販売しているアメリカから得られるかもしれない。
アメリカはこれまで、「戦略的あいまいさ」として知られる政策により、台湾が攻撃を受けた場合に台湾をどのように防衛するのか、そもそも実際に防衛するのか、意図的に不明確にしてきた。
現時点では、アメリカは外交上は「一つの中国」政策を堅持し、(北京にある)中国政府のみを承認している。正式な国交も、台湾とではなく中国と結んでいる。
しかし、ジョー・バイデン米大統領は5月、米政府の立場を硬化させるような発言をした。
台湾を軍事的に防衛するのかと記者から問われ、バイデン氏は「イエス」と答えたのだ。
ただ、ホワイトハウスは、これまでの立場を変えたわけではないと主張した。
状況は悪化しているのか
中国は2021年に台湾の防空識別圏に軍用機を送り込み、圧力を強めているようにみえた。防空識別圏とは、台湾が独自に設定した、安全保障を目的に外国機を識別、監視、制御する区域。
台湾は2020年に防空識別圏に侵入した航空機に関するデータを公開した。
報告件数は2021年にピークに達し、1日に56機が侵入することもあった。

台湾はなぜ世界にとって重要なのか
台湾経済は非常に重要だ。
携帯電話やノートパソコン、時計、ゲーム機器など日常生活で使用される電子機器の多くには、台湾製のコンピューター・チップ(半導体)が使われている。
ある指標では、台湾積体電路製造(TSMC)の1社が世界市場の半数以上を占めているとされる。

TSMCはチップを製造するいわゆる「ファウンドリ」企業。ファウンドリは2021年時点で1000億ドル(約13兆円)規模の巨大産業となっている。
中国が台湾を支配すれば、世界で最も重要な産業の1つを中国政府が手中に収めることになるかもしれない。
台湾人は心配しているのか
直近の中国と台湾の緊張状態をよそに、多くの台湾人が比較的平静を保っていることを示す調査結果が出ている。
2021年10月に台湾民意基金会が、「いずれ中国と戦争が起こる」と思うか質問したところ、回答者のほぼ3分の2(64.3%)が「あまりそう思わない」、「まったくそう思わない」と答えた。

別の調査では、台湾のほとんどの人が「台湾人」を自認しており、中国大陸の人とは明確に異なるアイデンティティーを持っていることが示された。

台湾の国立政治大学が1990年代前半から行っている調査によると、中国人、あるいは中国人と台湾人の両方を自認する人の割合は減少傾向にあり、大半が自らを台湾人だと考えていることが分かっている。

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